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とりかへばや物語 第三章 

さて、権中納言と右大将が都を去り、宇治へ向かうまで紹介しましたがその後。

つとめて、格子ども上げわたしたるに、うち見出でたるも、うつゝの事とはおぼえぬを、中納言は思ひかなひぬる心地してうれしきまゝに、あたま洗はせなどして、髪もかき垂れなどして見れば、尼のほどにふさくとかゝりたり。眉抜きかねつけなど女びさせたれば、かくてはいとゞにほひまさりけるをやと見えていみじくうつくしげなるを、かひありうれしと思ひ惑ひたれど、我心は、いかにしつる身ぞとのみおぼえて、世中の事もいぶせくほれく ゛として物のみかなしければ、起きも上がらぬ


その日はそのまま宇治の別邸にはいり、夜を明かし

朝になり窓を開ける。女君は外に目を向けても現実の事という実感がない。
中納言は思いが叶って喜んで女君の髷をほどいて頭を洗わせると尼君くらいの長さでフサフサ。
眉毛を抜いて墨で上にさらに眉毛を描いてお歯黒をすると美しい姿に
中納言は「よかった。うれしい」と喜んでいる。
女君はなれない女姿で困惑している。「どんな姿になったのか」と嘆いて悲しい。
中納言との情交も鬱陶しくて煩わしくて、ひたすら悲しいから起き上がりもしない。
そんな姿に中納言は「いじらしい」と思っている。

「これこそは世の常の事なれ。年ごろの御有様は、うつしごととやおぼしつる。もとよりひたおもてにさし出でて、あまねく人に見え交らはんの御このみに、ことさら交らひ給しにこそありけれ。めでたくとも、我身をあらぬに変へて過ぐし給へる事、有べきことならずあやしくとも、かくておはせんこそ、例の事なれ。殿にも聞かれ給はん、さらにあしと、世に思ひ聞え給はじ」

中納言が女君にこの姿こそ、正常で他人に会って交際しようと無理をしていたのでしょう。
それがりっぱな姿だったとしてもよくない。父上だって悪い事だと思われませんよ」と女君を諭す。

さすがに納得しかりのような女君

吉野の宮の取らせ給へりし薬の中に、夜に三寸髪かならず生うとありしを、かゝらんものぞとおぼして持ち給へるして、日ゝに洗ひて
この薬をつくるに、人にも見せで、さばかり好ましうなまめける身を、おりたちて中納言のあつかひ給にうちまかせて、我もほれぼれしく忍び音がちにて、はかなく日ごろにもなりゆく。

さすがに髪が短いのが見苦しいと思って吉野の宮が持たせてくれた薬に夜毎に9CMのびる薬があったので、それを中納言が自ら洗ってお世話するうちに日が過ぎていく。

京では右大将が失踪したと大騒ぎ、父の左大臣はそういえば去年の冬ぐらいから様子がおかしかったと嘆いている。
左大臣も困惑しかり、京中で読経や祈祷が行われている。

そのうち左大臣がうちの娘を愛してはいなかったのだと憤慨していると、風の噂で権中納言が左大臣家の四の君に密かに通っていたのを聞いて世をはかなんで姿を隠したのだ、四の君の姫君を権中納言の子供だといううわさが流れた。

そのことを右大臣が聞き、左大臣にも話をするとその噂が本当かもしれないとという事態の中、四の君以外に仕えている人で、四の君への父親の寵愛が並々ならぬのを恨みに思っている人が「権中納言との蜜ぎ事で右大将は失踪した。姫君を権中納言の子供で顔が似ているので不審に思っていた所、七日目産養の夜の四の君へ寝所で偶然見してしまったのです。」と書いた手紙を母上に見れるような場所に置いていった。母上はさっそく手紙を父に見せ、右大臣が姫君をまじまじと見ると確かに権中納言にそっくり。
「やはり」と納得してしまい、怒って四の君を勘当してしまった。
乳母子の左衛門は「同情しないわけにはいかない」とことのしだいを権中納言に手紙で知らせてつかいに持たせた。
さて女姿に替わった女君はこれより完全頭の思考も女へ変貌するただし一点を除いては


ひとへにうち頼みて身に添ひたるほどの、今は我身かくてあるべきぞかしと思ひ知り、なよくともてなしたるは、ありし人ともおぼえずらうたげにたをやかなるを、すべて限りなく思ふさまなる

今は一人権中納言をたのみに暮らしているうちに「私はこのようにしているのがいいのだ」親愛に満ちた様子はあの右大将とは思えない。

権中納言は
より寝ても覚めてもかやうならん人を見ばやと願ひしに、仏・神のわが思ひかなへ給なりけりと思ひよろこび、いかでくやしと思はせじ、ありし世を思ひ出でさせじとよろづにもてなすに、いかに慰みゆく

弱弱しくはかなげな様子がこういう人を妻にと思っていたのを仏や神様がわが願いをかなえてくれたと喜んで、こんな人といるなんてと昔を思い出させないようにと自ら大変お世話している。
そんな中納言もそういう生活が当たりまえになってくると昔の事で冗談を言いだす。女君は聞き苦しいと嫌がっていた頃。左衛門からの手紙が宇治にくる。
中納言は四の君の勘当をしり、むやみに女君に見せないわけにいかないので、事のありましを話して京へ出かけて行った。
女君は

たゞ人一人のあまりくまなき御をこたりと思ふぞ、疎ましきまでおぼゆれ

全てはこの人の好色に原因があるのだといとわしく思う。
中納言の去った後女君の和歌

 思ひきや身を宇治川にすむ月のあるかなきかのかげを見んとは

京に戻った中納言は四の君の下へ向かう。
もう右大臣家を勘当されているのでおそらくは乳母の家かと推察する。
さすがに気を許している双方で相手は妊娠しているから、四の君への愛情もひとしおで、遭えばこの人もと愛情が深まる。
さすが好色しばらく京でひっそりと四の君のお世話をした後宇治に戻る。

いと人少なにて、これもいとふくらかにところせう苦しげにて、よろづを思ひ続け、かきくらし思ひ乱れてながめ臥し給へるさまは、いかでこの日ごろ隔て過ごしつるぞと、あさましきまでおぼしつらん

宇治に帰れば帰ったで人の少ない場所でこれも大きなお腹をした女君が不自由そうに苦しそうで呆然と物思いにふけっている様子はなんで離れてくらしていたのかと後悔している。

ありし有様にてはこよなしかし、まして、かくのみ心を分けられては何にかはせん、などぞ思へど、いかにもく、このほどまではこの人を背き隔つべきにあらずと、さはいへど、男にならひにし御心はうち思ひとりて、

この様子が呆然としているわけでなく。「この男の心を四の君と二分しているようではどうしようもない。いやいや子を産むまではこの男の機嫌をそこねてはいけない」と

すごい超冷静!!!

やすらかなるけしきをと、いと思さまにめでたくうれしと思ふ事限りなし

かたや中納言、おとなしくしている様子が「このうえなく理想的で喜ばしい」と有頂天

超馬鹿男~~~~そのうち痛い目あうよん!!!


さて京の父左大臣は
今は恋ひ泣き給しことばさえ絶えて、ほれく ゛ と臥し沈み給にたるを、殿の内又これを嘆きあつかひたてまつる。

もはや見つからぬ女君にすっかり意気消沈床についてしまった。
男君にその様子に里下がりして試案する。こうなっては私が探しにいくしかない。と決意して母に打ち明ける。母も最初は反対したが、男君の意思が固いとみると父にも内緒で尚侍が帳台にいるように偽装して、狩衣と指貫、烏帽子を用意させて男君は髪を切り、着替えて車で京を離れる。
まずは女君が籠っていた吉野の宮の邸宅を目指すことにする。
その道中の宇治で

几丁に透きたる人も、見入るれば、紅の織単衣に同じ生絹の単衣袴なるべし。いと悩ましげにて
ながめ出でて臥したる色あひ、はなく ゛と光るやうににほひて、額髪のこぼれかゝりたるなど絵にかきたるやうにて、いといみじく愛敬づきうつくしきかたちの見まほしきが、霊くじうものよりけにねたげなるまみ、見しやうなる人かなと見るに、大将におぼえたりけり。心惑ひして見れば、いといたううちながめて物思ひたるけしき似る物なく見えて、顔やうはなやぎたゞそれとおぼゆるに、我身を思へば女ざまに似給へると思ふに、ふとたち寄りて、「いかにしてかくておほするぞ」と問はまほしけれど、さして知りがたく、うきたる
事により人にとがめられぬべければ、念じて見るに、人気やすらん、簾おろしつる、口惜しさぞ限りなき。

我をもあやしと見知りやし給らんとおぼゆるに、見えばやと思ひて小柴垣のもとまで歩み出でたるを、内にもあやしく人気のすると思ひて、簾をうちおろして見出だし給へるに、言ふかぎりなくけうらになまめきたる男のいみじくあてなるがさし出でたるに、いとあやしくおぼえなくとうちまぼらるれど、世に出で交らひことくしき人の見知らぬやうはなきに、さらに有しにはあらず、なをくくだれる際とは見えず、我ありし世の鏡の影にて、うち思ひ出づれば、内侍の督の君、限りとおぼしし夕べ、いみじく打泣きて、まほにはあらずうちそばみ給へりし御顔におぼえたるかなとふと思ひ出づれど、うつたへにその御有様変はりぬらんと思ひ寄らず、世にかゝる人の有けるよ

なんと兄妹宇治でニアミスしかも男君、女君としらずに恋心的な!ってか、好色・・・・・。東宮オンリーではないのね。あんなに人見知りだったのに男姿に性格までかわってる。
ここが式部卿の別宅だと聞きめんどうになったらと去ってしまう。


中納言は、忍ぶ方苦しさ静心なげにてまたおはしにしかば、こゝには月のかさなるまゝに、いとゞ起きも上がられずつれく ゛
とうちながめつゝ、かくてのみ有べきなめり、とる方なくあぢきなくも有べきかなと見るまゝに、人は、われに劣らず深き方に心を分けて、これに五六日又かれにさばかりと籠り居給絶え間を、さもならはずも待ちわたり思ひ過ぐさんこそ、あひなく心尽くしなるべけれ、さりとて、もとの有様に返りあらためなどせん事は有べき事ならず、ともかくもたいらかにもしあらば、吉野に参りて、尼になりてあらんとおぼすを慰めにし給へるを、中納言は知り給はず、今はをだしく、かくを見るべきものと打とけおぼしては、かぎりくと見ゆる有様のいみじく心苦しきに浅からず心を分けて、大方の世にはゞかりて歩きもし給はぬまゝに、中く心やすくこの二所に通ひ見給ふ。
年比、世とともに、心に物のかなはぬと嘆きわびつる思ひのかなふとおぼして、うちくは、心やすくもうれしくも、又心のいとまなく苦しくもおぼえて、静心なくたち帰り給へるに、これもいと苦しげにうち悩み給へるを、いかならんと、いづくにも心のみ尽くる心地して、打臥して語らひ給に

中納言は中納言で宇治に戻ればこの女君の苦しそうな様子にいとおしく、京では四の君を愛おしく2か所に限って通っている。
四の君と愛情を二分しているのに耐えかねている女君は子供を産んだら吉野に行って尼になると固く決意している。

先の男君の話が使用人から、中納言にチクられてしまう。女君は私が男姿でいたのでしょう。と適当にあいまいにして話を終わらせてしまう。中納言はまだ男姿でいたいのだと悲嘆にくれる。

さて尚侍は吉野の宮の邸宅につき宮に歓迎される。

いみじかりける人の御相かなとうちかたぶきて、これぞ我むすめに縁ある人にものし給めりと見給ふに、かつく ゛ いとうれしく頼もしくて、所につけたる御あるじなどおかしくしなし給

吉野の宮から大変立派な人相だと褒められ、我が家の娘と縁のある方だとおっしゃる。
そのうちお手紙をくださる事になっていますから、このままここでお待ちするように逗留を勧める。

さらにのりのりの吉野の宮
国母の位に極め給ふべき相おはせし人なり」と聞こえ給

女君がいずれ国母として極められる相があると予言しちゃいます。
国母とは天皇の母の事

そして男君は漢字や学問を一切されていなかったのでこの吉野の宮の元でよい師と巡り合い知識を吸収されて過ごしていきました。

宇治には、いと苦しげにて、月もたちぬれば、中納言かた時もたち離れず、いかにせんとおぼし惑ふに、人柄の、かたちをはじめ、いとにほひ多く愛行づき、中くいと見まほしきに、もてなし有様はれく ゛しくならひ給にしかば、いとあへかに埋もれいぶせくはなく、わらゝかにおかしく、いと馴れたる心つきて、物を思ひ嘆きてもひとへに思ひ沈みてはあらず、泣くべき折はうち泣き、おかしく言ひたはぶるゝ折はうち笑ひ、いはん方なくにくからず愛敬づき給へる人の、まことに物心ぼそく苦しきまゝに、いとたゆたげになよくと心苦
しげなるを見給ふ中納言の御心地、我身にかへてもこの人をいかでたひらかにとおぼし惑ふしるしにや、
七月ついたち、思ふほどよりはいたくもほど経で、光るやうなる男君生まれ給へるうれしさ、世の常ならんや。子持ちの君も、手づからかき臥せてあつかひ給さま、いとあはれなり。
若君をば目もはなたず、疎からぬ人の乳ある迎へ寄せて、乳母にも、世にあらはれてかゝる人のあらましかば、いかにかひく ゛しくもてなされまし、よろづ隠れ忍びたるこそかひなく口惜しければ、このほどは異事なくこのあつかひに心入れて、あからさまにも立ち出でず。日に添えて、

女君も出産の日がちかずくにつれて苦しそうにしているのを中納言ははらはらしつつも「この人を自分の身をかえてでも無事にお産させよう」と決意して、そのかいあってか7月1日に大変美しい若君が誕生した。
女君も若君をたいそう愛して自らお世話している。
ひそやかに生まれたためにしっかりとした乳母をつけられないのが残念だと中納言は思っているので、どこにもいかずに男君の世話をしている。


この若君のうつくしく光り出づるさまを、母君の御もとにさし寄せつゝ、
「あはれなりける契りを。昔よりかゝる御さまにて思ひなくあらましかば」と言ひ出給にぞ、
げにもあやしかりける身かなと思ひ出づるに、
かの所の七日の夜扇見つけたりし事など、いとにほひやかにの給出でて、かたみにおかしくもあはれにもおぼす。

若君を母の女君に見せながら、「昔から悩みのない。こういう生活をされていたら」というと「本当に変わった身の上だわ」と思われる。
過去にあった七日目の産養のしるしの扇の話も中納言に笑いながら言えている。

そんなこんなで過ごしていると男の変な安心感は増幅していく、このままもう京へ戻らずこうして生活してくれるに違いない。
若君がいるのだからと。
そう思われると親にお世話されていない四の君の出産が気がかり、それとなく女君に四の君の事を言ってみる。

しかしここに連れて同居しようかとにおわせる。
すると女君はかつての夫だと思われるのは恥ずかしいと適当にいいともいやともいわない。
中納言はまぁなんてねみたいに・・・・・はぐらかす。

すると中納言の浮いた様子が見透かされていてしっかり

かくのみこそは有べきなめれ、わが心一つにこそよろづの事につけて嘆き絶えせざりしか、大方の世につけてはかたはらなくなりにし身をあひなくもてしづめて、たぐひなくだにあらず、かくのみ待ち遠に思ひ過ぐさん事こそ、なを有べき事にもあらね、右の大臣、世人の言ひ騒ぐほど、なをしばし勘じ給にこそあらめ、世になうかなしくし給御むすめにて、ひたぶるに一方に思ひ許し給はば、あなづずよにこそあらめ、我いかなりとも、その人と知られあらはるべきやうなければ、かゝる宇治の橋守に、網代の氷魚のよるのみ数へんほどの心尽くしや、さりとて、もとのまゝに返りなるべきにもあらず、いかにして吉野山に思ひ入りて、後の世をだに思はんと思ひなるには、この若君の捨てがたく、憂き世のほだしつよき心地し給。

「所詮男心はこんなもん。私だけが嘆き悲しむのだ。かつてのような生活をしていた私が男を待つだけの生活などすることなんかできない。右大臣は今は人の目があるから感動しているが、恋しくなったら呼び戻すと中納言もあちらにいくだろう。この宇治の地で待つだけの生活だ。とはいっても男姿で戻れない、やはり吉野の宮の元で尼になろう。でも若君の事だけがさらに気になる」

一旦中納言は宇治に帰るが四の君の出産が気がかりで、しばらく宇治にいるだろうと思うと京から近況が伝えらてせわしがない。
女君はもうい幾日とはいない人だから嫉妬も見せずに、あちらへとうながす。
それとは気がつかない中納言はさすがに男姿の方だ。さっぱりしているな

馬鹿まるだし。

8月になると女君は若君の乳母に吉野の君に手紙を渡さないといけない事情があるが、中納言には知られたくないのでつかいをだしてほしいと頼む。
乳母は吉野の宮に姫君がいらっしゃるからその方だろうと思い込み依頼を受ける。
手紙を受けた吉野の宮は早速男君に知らせるとなんと使者から宇治の式部卿の別邸にいると知らされる。なるほどあの時の女ア君は妹だったのだと知る。使者に見事な女衣装を持たせてお手紙を返される。
その手紙を受け取った女君をあの時の男を兄だと知った。

そして中納言が四に君の出産で留守がちできずかない頃を見計らい兄妹が会いに来たと乳母に相談し密かに宇治の家で二人落ちあう。

月いと明かき影に、髪はつやくとひまなくかゝりて、限りなくうつくしげにて、いといみじく、女君、なつかしくうち泣きてゐ給へるも、いなや、こは誰そとおぼえ給。えもいはず清らになまめきたる男にておはするも、うつゝともかたみにおぼえ給はず。
行方も知らず聞きなしたてまつりて、思ひしさま、出でて来しことに、あやしく似奉りたる人の有かなと、恨めしきに忍びがたくて、もし御覧じ知るやうもやとすゞろにたち出たりし事など、こまかに語りて、
「さても、いかでかくてはおはしますぞ」と問ひ給に、答へきこゆべきやうもなく恥づかしけれど、艶にをしこめて有べきことならねば、

「年比は、世づかぬ身の有様を思ひ嘆きながら、さる方に、いかゞせん、ありつきぬべきよと思ひ侍しに、心より外に憂きことの出で来侍にしかば、さて有べきゆもなく、思ひわびて身を隠し侍にし」
さま、けしきばかりうちの給へる、さなんなりと心得はてて、
「今はさは、かくておはしますべきにこそあなるを、かくのみ人知れぬさまにてはいかゞ過させ給はん。殿にはいかゞ申侍べき」との給へば、
「その事に侍る。かくてのみなんさらに侍るまじうおぼゆるを、世づかぬ身なりしほどのみ、恥づかしさを、異人に見えあつかはるべきにはあらず、あさましと見え知られにし人にこそはと、ひたぶるに身をまかせて侍つれど、今はながらふべきやうにやと生きとゞまり侍に、かくてはらじとおぼえ侍れど、さりとて有しさまに身を又なし変へんは、有べきにもあらず。とてもかくても、身の世づかぬをき所なくおぼえ侍を、此吉野山にかたちを変へて跡を絶えなんと思侍」と、うち泣きての給。
「わが君、かゝる事なの給そ。殿・上のおはせん限りは、我も人も世をなん思ひ限るまじき。御事により、殿はむげに不覚になり給へりしを、見置き奉りてなん出侍にし。げに、何にかはかくて忍び隠ろへておはしますべき。又、ことざまにては、聞こえ出で給はんもあいなし。我なん、「たゞあるさまにもてなしてあれ」と言置き出で侍にしかば、誰にも見え知らるゝ事も侍るらざりし身にて、そのけぢめのありなし知る人も侍らざなり、さてこそやがておはしまさめ。さても、中納言ものし給らん、悪しかるべきことにもあらず。今始めたるやうにもてなし、中く人目やすくこそ侍らめ」との給を、答へはともかくもの給はず、
かくて、この人に行方知られであらばやと思ひ侍なり」と聞え給へば、
そは、いと悪しき事。人柄さておはしまさんに、げにいとやんごとなき事にはあらねど、口惜しかるべき際に侍らず。いかにも、さらばまづ忍びてわたらせ給て。殿の聞えさせ給やう侍なん」と聞え給へば、
「殿に、かくてこそありけれとは聞こしめさあれじ。ただ、世づかざりける身をもたわづらひたりけるさまを」と、
うち恥ぢらひ給へるも、年ごろいとすくよかなりし人の御もてなしとも見えず。つきすべくもあらぬに、夜明けぬべければ、やをら出給て、これより京ざまにおもむきておはするも、今は限りと思ひたちしほどのあはれに思ひ出られ給て、おはしますをも知らせ給はず。

さてようやく再会した二人しんみりとお互いをほめたたえる。

そして本題

女君それとなく今まで男の姿で過ごしていたけれど、見苦しいと考えられて密かに籠って女の姿になろうと京を出た。と言い出します。
「ではどうしましょう」と男君がきりだすと。女君すると吉野の宮の元で尼になると泣き出します。
男君ここで説得「それはいけません。両親がいるうちはこの世を見限ってはいけません。丁度里に私がいるようにしてくださいと言っているのでこのまま入れ替わりましょう。それから中納言と結婚したとすれば周りもおかしいとは思いません」と提案。
すると女君きょひる。

「あの人には行方を知られたくない。」といいだす。
すると男君
「あおいう好色ですがこようえなくというほどではありませんが、たいしたことないわけではありません。ただそうしたいなら父上の話もありますからまずはここを出ましょう。」

「父上にはこういう生活をしていたと知られたくないのです。」とぼそり。


男君はすっかりメンズしてる・・・・・・。これから尚侍で女装していた名残もまったくなくメンズ感大の男君です。
そういう話をしているうちに夜が明けそうなの男君はこっそり京へ戻った。

一方父の左大臣は女君が失踪してから病床にあって、そんな夜へんな夢を見る。

かくなおぼし嘆きそ。この御事どもは、いとたいらかに、明けんあしたにその案内聞き給てん。昔の世より、さるべきたがひめの有し報ひに、天狗の男は女となし、女をば男のやうになし、御心に絶えず嘆かせつるなり。その天狗も業つきて、仏道にこゝらの年を経て、多くの御祈りどものしるしに、みなことなをりて、男は男に女は女にみななり給て、思ひのごと栄へ給はんとするに、かくおぼし惑ふもいさゝかの物の報ひなり

聖が出てきて
案じる事はない。前世の行いの為に天狗が男を女に、女を男にしたけれど仏の祈りに成仏して今元に戻った。明日には吉報がくるだろう。という内容で、は???と思ったから男君の母の方の妻にこれこれというと驚いて男君が狩衣で女君を探しにいったと真実を伝えたところ。私が知らないとはと・・・・あきれている。

幼かりし時より交らひつき給にし大将こそびゞしかりしか、あへかに人にも見えず籠り給てし人と思に、かたくなしくおはすらんとおぼすに、御前に参り給へるに、起き上りて、御殿油かゝげて見奉り給に、たゞ大将の御にほひ有様二つにうつしたるやうにて、これは今少しそゝろかになまめけるけしきまさり給へり。かれは少しさゝやかに、小さき方により給へりしぞ飽かぬ心なりしかど、まだ年の若かりしに、これはいま少しものくしく、飽かぬ所なくぞ見え給。うちまぼり給て、夢のやうなる

男君が邸に帰り父と面会すると長く籠っていたから見劣りする男姿かと思いきや女君とうり二つで、さらに男っぷりが増してたいそう風雅で威厳がありまったく欠点がない。

その姿は失踪した女君でその人を思い出して涙する。

男君は女君が女の姿にいたこと、かくれたのは女に替わる為だったと話した。

父は疑問に思わず、うれし涙にくれる。
では二人入れ替わりなさいと言われると。男君は「まだお互いの世界を知らないので、いろいろ相談してからにします。」と話し合い、父は安心して御粥を召し上がる。

そうして男君を連絡をとりながらいついつに逃げると女君は宇治にいる。
そうはいっても若君が愛おしい、でも連れてゆけない。何故なら隠し子では世間に出せずにどうしようもない。
中納言も若君を愛しているから無体な事はしないだそう。
まだ中納言の子とわかるだけ世間へ出せるし、会える事に期待している。
しかし若君の事は愛おしい
若君を目離れず見給に、いみじくおかしげにて、やうく物語り、人の影まもりて笑みなどするを見るぞ、いみじうかなしかりける

そうこうしていると中納言も宇治に帰る。
もここにはいないと決めた女君は嫉妬もまったく見せない。

紅の単襲に、をみなめしの表着、萩の小袿、いたく面やせ給へりしが、このごろなをり給へるまゝに、いとゞはなばなとにほひを散らしたるさまして、御髪もつやくと影映るやうにかゝりて、丈に少しはづれたる〔末の、ふさくと物を引ひろげたる〕やうにかゝりたる裾つき、さがりば、八尺の髪よりもけにいみじくぞ見ゆる。額髪よりかけたるやうにかゝれる絶え間、かしらつき・やうだいなど、こゝぞとおぼゆるくまなく、うち見るにはいみじからんもの思ひもはるけ、憂へも忘れぬべく見ゆるに、心のゆく心地して、「子持ち栄へこそあまりにし給へれ。などて過にし方おはせし有様をめでたしと思ひけん。かくてはこよなくまさり給へりけるを。かゝるさまにてさし出交らはせ奉らんに、うち見ん人ごとに心惑はざらんや」と、限りなきけしきにかき撫でつゝ、わが身にもかへつばかりに思ひ惑はるゝ人の御心苦しさは、たゞ今は慰みて、異事なく語らひて臥し給へる

紅のを二枚重ねて、縦黄色・横糸萌黄色女郎花の表着に表紫裏白の萩の小ネ圭を着て華やかに満ちた髪を黒々とした美しい姿で迎え、辛きこと晴れ晴れとする悲しいことも忘れさせてくれるくらい素晴らしい。
「子供を産んでからさらに美しくなられましたね。以前の姿を美しいと思ってたとは。この姿を見たら殿上人も心惑われるでしょう」
女君を倒してはかき乱しながら抱いている。

そうこうすると京から四の君がいまに死にそうと使者がくる。
また変化があれば知らせに来るようにと中納言はその場にいる。
しかし出産も近いので、ここにも長くおれず。
女君にお伺いをたててみる。

「しばらくの間の事だから、無情な状態だから私が恨まれると困るからなんだよ。あなたは物の分別もあり嫉妬心もないので安心している。事がすんだら私を見て」あぁだこうだ言ってくださいとなんだなんだ行く理由をつけている。
女君には嫉妬もまったくないので、そんな事はない。「あちらが心配だからさぁ~~さあ早く。」と男を積極的に送り出す。
男はそれでも気がひけるから「あなたがさあ行ってくださいとおっしゃったら出ていく。」といので「さあ いってください」と女君が言って中納言は京へ行った。

馬鹿男~~~これが最後に知らないでまんまとひっかかった。まああ物語なんでね。

変はり給けしき見えじとさらぬ顔に忍ぶれど、出で給ぬれば、若君抱きて、つゆまどろまず泣き明かし給ふ。

変わったところをみせまいといつものように見送るが、家で若君を抱いては泣き明かす。


その翌朝四の君女の子を出産して、無事だという手紙がくる。女君はそぶりを見せずに返しの手紙を書いている。
まだ中納言が京にいると思うので、この頃がと

宮に消息聞え給とて、日ぐらしこの若君をつと抱きつゝ、忍びて打泣きなどし給ふ。

もう最後におもうので若君を抱きしめては一晩中泣いていた。
よく夕方男君に連絡して乳母にも再度縁者の男の訪問を手引きしてもらい。前回の様になにげなく若君を乳母にあずける。
そのまま車に乗り込み吉野へ向かう。

翌日には吉野へつき宮は元の所ではいけないので娘の部屋に一室もうけて女君を迎える。
父からもいろんな品が送られてくる。


心やましき思ひ絶えずいぶせかりし憂き世の中離れて、やすらかにおぼさるれど明け暮れ見馴れし限りなく山口しるかりし顔つきぞ恋しく

中納言との面倒な情交も切れてほっとしているが、明け方暮れ方に若君の有望な顔立ちを思い出し恋しいと嘆く。

男君は、たち離れながら、中納言の心の中苦しくおぼさるゝにやと心得たまひて、「あやしく世づかぬ有様も見奉り知り給にけん人を、あらためてかく離れさせ給はんも、あぢきなき御事に侍るべきを、いかにおぼしめし定めさせ給ぞ」との給を、「心より外に心得ぬ契りの有けるに、寝ざとくまではいかゞ侍らん。心憂しと思ひながら、何心なくいはけなき有様を身に添へて、あやしかりぬべき侍しかば。見捨てつる心苦しさばかりをなん思侍る」とて、忍びがたくうち泣き給ふけしき、いとあはれ也。「げに、さおぼさるべき事侍゛ な

その様子を中納言の心中を思い合っての事だろうと察し「これからどうしようとお思いですか」
と聞くと女君は「心外で納得の出来ない契りでした。その男と将来のことなど考えられないが捨てて来た息子の事を思っているのです」と涙する。

「なるほどそう思うのは当然です。その子が離れがたい御縁なのですね」
と父には息子の事はいえず、中納言とは縁を切りたいと思っているのだと推測した。
どうなるのだろうかと憐れに思われている。

男君のほうも東宮様がご懐妊?と思っていた頃に京を出てその様子も心配だしこの女君が尚侍で宮中にいて東宮様に仕えてくれたら、自然と近くにそういう機会もあろう。ならばといままでの事を詳しく女君に伝えた。

ふる里には、いとあはれにてたち帰りにくく侍れど、殿・上を思ひ聞えさする方はさる物にて、その御事によりてこそ、えさらず思ひ立つべく侍なれ」などうち語らひつゝ

やはりここで出家するわけにいかないなと二人入れ替わる相談をする。

お互いのいままでの経験を話し合い、女君は笛、筝、琴、琵琶などの楽器、漢詩や文字も真似しあう。
元々似ているのだから尚にせようとするからにないわけがない。それぞれ元の通りに勉強しあっているうちに

つれく ゛ なるまゝに、さし向かひて、おほやけわたくしかゝる御物語の中に、麗景殿の細殿におりく行きあひし人のことなどをさへ語り出て、「右の大殿の君のはじめよりの有様、大臣の明暮恨みられしを、内くの乱れは知らず、世にある程にては訪れぬ恨みいみじう侍なんものぞ。げにすべてつゆ飽かぬことなく、いみじうすぐれてみでたきを、権中納言のこと思ふに、心より外の事にぞ侍かし。今はうけばり、我ものといみじう思ひとゞめてあつかひ給しを、昔ながらもの給ひ寄らん事」など、みな語り聞え給。

話はだいぶはしおっているので実は女君が出仕してる時に麗景殿女後の妹という女と夜を話し明かしたり、和歌を送りあったりした話やなんと!四の君の右大臣の実家によらなかったらひどく恨まれたので四の君も大変素晴らしい女性で中納言との浮気も元は自分からではなかったと思うので男君が京へ戻ったら四に君の所に通ってくださいと申し出る。
ようは四の君と寝てくださいと言っている。・・・・・・・???

麗景殿女御の妹はまだわかるけど、
なんっせ後見人がいないと宮中でも肩身が狭いましてや後見をもたない麗景殿女御の妹では右大将は考えられる将来有望だもの。
ではなぜ???自分を裏切りプライドを傷つけた相手四の君に????。

これはどれか?
中納言への復讐 二人とも失う
四の君への慕情 心は男だからやはり中納言に対しての嫉妬・男君=私
右大臣家の後見 二人とも左大臣の子息だけど後見人は多いほどいい。右大臣の後見は味方になる。

全部かな???しかし平安時代の人も常識は???だけどね。

東宮一人まっしぐらかと思った男君
ここで前回に躊躇して姫君に手を出さなかったが、ここにきて美しい姉姫君にラブ~~~~流れのままにベットイン。
ようは父親公認の夜這いですが。
成就でき二人は恋人同士に。


さて一方の中納言、宇治に帰ると女君が若君を残して失踪。乳母や使用人を事情を聞くもさすがの乳母もいいだせない。
知らないと中納言途方にくれる。若君を抱いて泣き明かす。自分への歌もあるかもとそこらじゅうをひっかきまわすが、そんなものはない。四六時中若君を抱いて女君の無情さに泣いている。あれこれ詮索するもまったく足取りをつかめない。最後は若君がたよりとばかり悲しすぎて和歌も詠めない。


っていうかお前が悪い!!!この人更に馬鹿みたいになっていきます・・・・・・・。

さて四の君ですが、今回の産後の肥立ちが悪くていまにも死にそう。最後は父上の御顔を見ずに死ねないとさすがの母親も右大臣に直訴して。
元四の君をこようえなく愛していた父だからさすがに後ろめたくなり四の君の元へ。あえば愛情こようえなく。邸へ移してお世話する。四の君の中納言がこないのも父の所にいるからどと思い込んでいるのも丁度いい。
この姫君の愛しいと乳母をたくさんつける右大将がこないのが残念だと思ってる。

さて吉野では両親がいまかいまかと帰京を待っているので、もうそろそろというころ。
男君は姫君を京へお連れしたい。でも姫君はこのひなびた父のいる場所を離れるのもさみしい、京は気後れすると・・・・・。
とりあえず今回は吉野に残してお迎えの準備が出来たら、おつれしようと思っている。

さて二人京へ次は最終章です。
どうなるか?ってかだいたい検討はつくでしょうが。でも中納言の展開が面白いですよNNN





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