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舞少納言「とりかへばや物語 第二章」 

前回の続き原文の第二巻は中納言が吉野に向かう所からですが、どうも幕閉めには?思うので舞的な第二章という事でご理解

では宮の宰相は四の君だけをただただ思っていているだけでなく、まだ内侍の事も気になり、宰相の君という宣耀殿に仕える人に泣き落として宣耀殿へもぐりこむ事に成功。
宣耀殿は丁度物忌中というのでどこも締め切って内侍は東宮の御座所梨壺にもいかず、じっと籠っていました。
そこへ宮の宰相が乱入!
しかも尚侍をじっくり眺められる距離に接近することに成功します。

尚侍は驚いたものの、落ち着いて宮の宰相をなだめはじめます。丁度女房も2人いて状況は把握され、宮の宰相も強気に出れない両者膠着状態に。
宮の宰相は落としたい、尚侍は当然秘密を知られるのも困るし騒がれるのも困る。
さてここで内侍はなびく様子をまったくみせずに宮の宰相和歌などでに出ていくように促します。
宮の宰相は翌日まで粘りますが、相手がまったく靡かないので、しかたなく手紙を送るという約束をかわしてその場を去ります。
しかし当然送られてくるはずもありません。

してやられたと後悔しても遅い。
消沈しかりの宮の宰相は

方く ゛の形見と、中納言のいと見まほしかりければ、すゞろなるやうなりともいかゞはせんと思ひておはしたれば、「出でさせ給ぬ」とて無し。壺の方を見入れて、歩み進みては入らまほしけれど、かひなければうち嘆くを事にて、「いづち出で給へるぞ」と問へば、「大殿におはする」と聞こゆれば、そなたざまにおはしたり

ってかやばいはこのキャラ。
だってこの時は女君を男という認識なのに、しかも正妻を寝取って子供まで作っときながら、尚侍にふられたから二人の縁の人中納言を見て居ようってどういう神経だか???まあ物語だからなんともいえないけどね。

替わりに女君を見て心を慰めようと訪問するも丁度邸宅にはいなくて実家に行っている。
わざわざ実家の西の対まで忍んでやってきます。

暑き日にて、うちとけ解き散らして居たりける、見つけて、「いと不便に、無礼にて侍に」とて逃げ入るに、「あが君、たゞさて」と言ふに、聞かねば、女も無き所なれば心やすくて、続きて入りたれば、「まことに身苦しう」とうち笑ひて、つい居ぬ。「乱り心地の悪しきに、対面の久しくなるは、いみじう恋しく心細ければ、わざと尋ね参りつること」と恨むれば、「わりなしや。なめげなるに」と言ふを、「をのれも苦しきに、さて侍らんずるぞ」とて、装束解けば、「さらば、よかなり」とて居たり。

めっちゃ暑い日にだれもいないでの女君は装束の紐をといてだらりとして、おそらく指貫の記述がないので下袴だけの姿。

涼しき方に、昼のおまし敷きてうち休みて、団扇せさせて物語などするに、中納言の、紅の生絹の袴に白き生絹の単衣着て、うちとけたるかたちの、暑きにいとゞ色はにほひまさりて、常よりもはなく ゛ とめでたきをはじめ、手つき身なり、袴の腰ひき結はれてけざやかに透きたる腰つき、色の白きなど、雪をまろがしたらんやうに、白うめでたくをかしげなるさまの、似る物なくうつくしきを、あないみじ、かゝる女の又あらん時、わがいかばかり心を尽くし惑はんと見るぞ、いみじう物思はしうて、乱れ寄りて臥したるを、「暑きに」とうるさがれど、聞かず

紅の生絹の袴は下袴、夏なので薄い。
体の線がまるわかり。上も白き生絹の単衣着とだけあるのでおそらく上のネ包ははだけている。
汗ばんで血色もよい女君は女にしか見えない。

ここで宮の宰相は女君は男という認識がなくなってゆきます。
あまりの女君の色気にすっかりのぼせて
まあ男の本性で女と野生の感が働いたともいえるか。抱きしめて押し倒します。
女君もここで強くきょひるでなく、「暑いやん」ぐらいで男をそのままにしている。
ん~~~~見た目には男二人ぴたりと寄り添って臥している。


物語などして、暮れぬれば、風涼しくうち吹き、秋来にけるけしきことにおぼゆるに、いと起こすべくもあらず。内侍の督の御方にもつゆの御消息伝ふる人のなく、こゝらの年比の思ひむなしうなりなば、我身の跡なくなりぬべきよしを言ひ続けて、恨むるさまのいみじうあはれなるに、このわたりにもかくぞ言ひけんかし、げに女にて心弱くなびかではえ有まじくもあるかな、さてもうしろめたのわざや、忍びても、さばかりひとつ心になびかし果てでは、それをまたなき事に思ひ嘆きて、逢ひても逢はぬ恋のひとつにてもあらず、またかく添へて
思言ふよ、いかにひまなき心の中ならんと苦しきにも、さまく ゛ あつかはるゝにしのびがたくて

日が暮れて秋風を感じるときになっても宮の宰相はまったく女君を起こさず、内侍への日頃の思いをとくとく女君に話している。
どうしてまあこんなに多情なのかと女君は困惑している。

  ひとつにもあらじなさてもくらぶるに逢ひての恋と逢はぬ嘆きを

一人だけを思っているんじゃないでしょ。ところで会って会った跡の辛い恋と会えないでいる嘆きとどちらの恋を悩んでいるのでしょう?
四の君の事も知ってるよ的な和歌ですね。大胆!!!

うちほゝ笑みたるけしきにて、まぎらはすけはひなど、すくよかにをし放ちて見るめでたさは、物にもあらざりけり。
身に近くうち添ひて、すくよかならず乱れたるなつかしさに、さらに逢ひての恋も逢はぬ思ひも、みな慰みぬる心地して、思はしういみじきに、見けるをやと思ふいとをしさもさしをかれて、いとゞかき抱き寄せられて、

って言ってほほえんでいる様子でまぎらわしているいつもの冷めたくしない打ち解けた様子は遠くから眺める美にかなうこともない。
そんな様子の女君に自分と四の君の関係を知られやしまいかというやましいことも忘れて、ひたすらかき抱きしめて

 くらぶるにいづれもみなぞ忘れぬる君に見馴るゝほどの心は

くらべようとする人をみんな忘れてしまったあなたになじんだ私の心からわ。

とも言ひやらず、 うるさければ、「そも頼もしげなかなり。 誰にも離れる形見としもおぼさるらん」とて起くるを、さらに起こさず
「まことは、あな物狂おし、殿の御前にの給事ありつれど、いみじう暑かりつればうち休みしに、急ぎたちて参らねば、あやしとおぼすらん。まづ参りてこん」
とて起くるをいかにおぼゆるにか、あやにくにひき別るべき心地もせず、「あが君」とつととらへてわりなう乱るゝを、「こはいかに、うつし心はおはせぬか」と、あはめ言へど聞きも入れず

宮の宰相はいろいろその場をとりつくろっていろいろ言って逃げようとする女君についに実力行使に出ます。
女君を押し倒して、肉体関係に及ぼうとしてしまいます。
女君は「何するのです?正気を失っているのですか?!」と侮辱してみるが
しかしおかまいなし宮の宰相は女君を手籠めに。

いっていうかこの時点でも相手が女という事に気ずいていません。理性的にはそう野性的に女と感じているというふうです。
でもこのあたり物語としては絶妙です。超絶技法

さはいへど、けゝしくもたなし、すくよかなる見る目こそ男なれ、とりこめたてられてはせん方なく、心弱きに、こはいかにしつる事ぞと、人わろく涙さへ落つるに、さてもめずらかにあさましくとは思ひながら、あはれにかなしき事、方く ゛ の思ひひとつにかきあはせつる心地して、あやしなど思ひとがめられんも、ことのよろしき時の事也けり。
残るくまなく見つくしつと思ふにかばかり心にしみてあぼゆる事のなかりつるかなとおぼゆるぞ心惑ひのひとつなるにくらされて、あさましかりけるなども思ひ分かぬけしきなるを、中納言は、いかに思ふらんとかなしう、世にながらえて、ゐにわが身の憂さを人に見え知られぬるよと、涙もとまらぬけしきの、うつくし
うあはれなることぞ、似る物なきや。
我も泣くく、「今はかた時離れてもえ有まじきを、いかゞすべき」と言ひわぶるに、夜も明けぬれど、起き出づべきけしきもなし。
はらはらと泣き出す始末、まあ そんなことされた事ないので心も弱くなるよね。

あれ?いつも強気の中納言が泣いちゃってる。???「怪し」この辺りでええ???という感じ。
で行為の途中で女と気ついてさらに喜ぶ。

手籠めにされた後、女君相手は自分をどう見ているのかと悲しみ、宮の宰相は男だろうと思っていた相手が相手が女であった事の混乱と、しかも女が「女は全部経験済み。」「これほど心に染み入るのはなかったな。」と感激しているようで男のなりをして!!という軽蔑はないこの非対称が面白い。

吉野の宮のの給しやうに、是もこの世の事ならず、さるべき契りにこそはありけめと思ひなすに、いともて離れがたければ

先に冷静になったのは手籠めにされた女君
吉野宮のお話が本当ならますますここで荒っぽくして大事になってはいけない。

「あはれ、げに、人目のいと例なきやうなるを、同じ心にあひおぼほして、人目見苦しからずもて、なし給はばなん、まことに深き御心とは知るべき。世にむもれ、人しげうなどはおぼすべき身ならねば、いつもくさりげなくて、かばかりの対面は難かるべきにもあらず

あわれなと思ってこのままに平常心で接してくださって、黙っていただければ情がおありであるとありがたく思います。いつも普通にしていただければ世間の一般の結婚という晴れがましい重々しい者ではありませんからこれぐらいの機会はあります。
と異常なまでの低姿勢。

げにさる事と思へど、たゞかた時、たち離るべき心地せぬに、起き別れん事のわびしうおぼゆれば、返々誓ひ契りて、からうして出でぬるなごりも夢の心地して、なぞや、世に消えやしなましと、この人に出で交らふも恥づかしう、あさましうもあべいかなと思へど、殿・上のしばしも御覧ぜぬをば、いみじき物におぼしたるをと思ふにぞ、せめてひき留めらるゝ心地する。

宮の宰相はいつまでも離れたくない気持ちはするがそうのしていられないので女君が上手に逢瀬を約束して邸から出した。
その気配も夢のようでこの世から消えてしまいたいが父母の悲しみを思うとそうも出来ないと思い悩んでいます。

しかしここまで女君は激しく抵抗できたはずです。
最初の段階で尚侍の様にでもしなかった。
よしんばさらに男を挑発しかねない和歌まで詠んで。

これは宮の宰相への同情からなのか?
四の君への当てつけなのか?不明

まぁっこうならないと収集つかない物語なんでね・・・・・・・。

このあと涙涙に邸を出る宮の宰相をなんとか追い出し、装束をただして部屋にいたところを父と遭遇。
いろいろ話していた時に後朝の文が

いかにせんたゞ今の間の恋しきに死ぬるばかりに惑はるゝかな暮れざらんに、 あが君く」 とぞある


人ごとに死ぬるくと聞きつゝも長きは君が命とぞ見る

死ぬと言ひいくら言ひてもいまさらにまだかばりの物は思はず

まして思へ世にたぐひなき身の憂さに嘆き乱るゝほどの心を

和歌の応酬

この後、女君は宮の宰相が煩わしくて、体調不良で邸に籠り切り、宮の宰相が再三訪れるもまったく遭おうとしない。
宮の宰相も毎日訪問してはしげなく追い返されて憐れな感じ。

所がようやく女君が内裏へ参内する情報を聞きつけ自分も参内するけど女君がしゃんとしてまったく隙を見せないから近寄れない。

とうと御前に召しありて参りたれば、例のけ近く召し寄せて、例の内侍の督の御ことなりけり
うちまもり御覧ず。中納言のかたちのいみじうにほひやかに見まほしきを御覧じて、督の君のいとよく似たりと聞く、げにこれ、髪長くてよく化粧じ、額髪長やかにかゝりたらんは、天女の天降りたらんもうるはしうことく ゛ しかりぬべし、これはげにぞ愛行づき、はなやかなるさまは並ぶ人あらじをなどおぼしやるに、さらに御覧ぜでは有まじく、わりなき御心地せさせ給ひけり。


帝も参内した女君に尚侍の話、つまり尚侍を入内してほしいという要望を聞いている。
すると帝も尚侍の面影を女君に求め、女の様子を中納言に模してみる。
宿直の場所にいる宮の宰相も気が気でない。もしも帝が女と知って自分のように事を起こさないかと心配でならない。

け近く馴らしては、宰相にこりにたれば、まめやかにかしこまりて、いかにも世の常の有様を思ひ離れたるさまをすくよかに奏して候ふが、あく世なく御覧ぜまほしければ、無期に出させ給はぬを、宰相、わがやうに御覧じつけたらん時、例なきさまにても、御横目あらじかしと思ひ寄るに、いつも御覧じつけては、かくのみ語らひなづさはせ給と見しかど、日ごろは何とも思ひとゞめられざりしを、うしろめたく、胸のみつぶれて静心なし。


宮の宰相のように帝にまで悟られぬように女君はさっぱりとして、すきをみせずに奏上申しあげるが、帝は女君をしげしげ見つめて下がらせない。
 

からうして御前を立ち出でたれば、待ちうけて、例の休み所にする所につれて行くを、せめてもえひきも離れず、もろともに御宿直などやうにてとゞまりぬう

やっと下がって今度は宮の宰相が待ち構えていた。しかたなく宿直の待合部屋で込み入った話があるようにして、人を遠ざけてしまう。

すると人影がなくなった所で女君がつんと
あが君や、まことにあひおぼさば、いとかくいちじるくなもてなし給そ。見る目のかたく、行き逢ふ瀬あるまじき事こそ、かやうにはおぼさめ、明け暮れかくさし向かひ御覧ぜらるゝには、何のめづらしきふしにか、さもおぼさるべき。たゞ世づかぬおこがましき身の有様を、ことさらにもてかろめ給べきなめりとなん思へば、いとなん心憂き」と、

「あなた本当に私を思ってくれているなら人目のある所で、大胆なふるまいはやめてください。会うに会えない私達ではありません。なんでそんなにあけっぴろげでは私の立場を低いものと感じて辛くてなりません!

向ひ火つくりて怨ずれば、
「かうの給、いと心憂くわびしく。中く世の常に逢ふ瀬かたからんことは、とてもありや。かうて見奉るこそ。をし放ち、もてすくよけ給へるを見るこそ、心惑ひの何にもたとふべき方なき」
ここで反論
「そんな事を聞くのは残念。逢瀬の機会が少ないなどと私達ではありません。ことさら冷たくされる様子が辛くてなりません。」

「なを人目見苦しからぬほどにを」と契るも、いと堪へがたき事に思ひ惑ひたり。

あんまり宮の宰相を刺激したくないので強くいえず女君は「あまり人目につかないようにしてください。」としないえなく。

そのあとなんと!

忍びわたりの事をほのめかし出でて、「けしきはみな知り侍りにしかど、何とて、わが身は例のやうならで、誰にもあやめ顔ならんと思ひ侍しかば、たゞほれく ゛ しきやうにて過ぎ侍を、さるべからん時くは、いとおしげなるけしきも慰めさせ給へ」と言ひ出でたるに、いみじういとおしけれど、わづらはしき思ひ交らねば、心やすく、隔てありては見えじと思へば、はじめよりありしさまをくはしう語て、かれに心慰むまじきよしを言ふ。
いで、あな心憂、たぐひなげなりしけしきを、かく言ふやう、これこそは月草の移ろひやすき心なめれと見るに、あはれと思はんかぎりは、うちほのめかし言ふべきにもあらざめり、また、思ひ移ろふ方あらん時は、めづらかなることの有しやと言ひ出んと思ふに、いとうしろめたう、かゝる人にしものがれぬ契りのありけるよと思ふも、いと心憂し。

自分への欲情を四の君への情交で間際らわすように促す。
どういう神経????不明。

すると四の君への愛はたまたま女君に会いたくて訪れた事がきっかけでいいはじめ。
これを聞いた女君はだからいやなのだ!
自分が好きなうちはいわないけど、ほかに愛する女が出来た時、こんな女がいたよというに違いない!

なかなかするどいご指摘

すると宮の宰相はその通り行動するんですね。身なりがこういう私だから逢瀬はやすやすと出来ない。
そのかわり四の君で慰めてくださいと理解する。変なの?????

その後宮の宰相との逢瀬はきっぱりと切っていたが、いつもの月の障り(生理)がきて乳母の六条にある家に籠っていた。
話を聞きつけた宮の宰相はそこにも突然現れる。

こうなると世間の目がないので、断る理由がない女君は宮の宰相を受けいるしかない。
宮の宰相は思いの限り女を抱き情交にふける。

いと心やすき所なれば、うちかさねて臥し、よろづに泣きみ笑ひみ言ひ尽くす言の葉、まねびやらん方なし。

ひたぶるにわが物と見なして起き臥し語らふ

恨み泣きつゝ臥し起き、いと思さまに胸あきて、例籠り居給へるほどよりも多く過ぎ行

一週間以上乳母の家に入り浸っていたんですね。
女君はさすがに右大臣に怪しまれるから手紙を書きます。すると四の君から和歌が届く。
すると宮の宰相が

宰相に見せでもあらばやと思ひて広げさせぬを、さなめりと見ながらあながちに奪い取りて見るに、ふと胸つぶれて、さこそいへ、見るに顔の色うち変はりまめだつけしきの、なをいみじう物深げなるを見るに、かゝる人を頼みて、わが身をもてかへて入り居なんよなど、頼もしげなくおぼゆるに宰相は千代の命のびぬる心地して、かたはなるまで起き臥し遊びたはぶれて、この世ならぬまで契り語らひて、あまり日数の多く過ぐれば、出で給なんとするを、「またいかにもて離れ、ことの外なる御けしきならん」と、言ひ返して恨むれど、さてのみあるべきならねば、こしらへ出だして我もところくに出でぬ。

手紙を宮の宰相に奪われ顔色が変わる姿を見て、こんな不誠実な人の囲こわれになるなんてと思えない女君。
その後さすがにずっとこうしてはいれずにあれこれいいつくろいなだめて宮の宰相を返す。

かくのみするほどに、十月ばかりより「音無しの里」に居籠ることとまりて、心地例ならず。かゝらんとは思ひ寄らず、たゞいかならんと心細く起き臥しつゝ、これは隠れ所求むべき心地ならねば

生理がなくなって乳母の家に行っていない。体調もなんかよくない。なんでかな????

十二月になると、

物もさらに参らず、いたく面やせて、つゆ橘・柑子やうの物も見入れず、つきかへしなどし給を


はい女君妊娠発覚

食事ものどを通らず、果実もほしくなく吐き気がもようす。
どうしようかと真剣に悩んでします。親にも相談できずどうしようか。宮の宰相に相談すべきかでもあんな男に・・・・・・。

結局宮の宰相に話があると例の乳母の家で

「かういみぎきことを嘆き重ぬるに、月ごろになれば、いと契りもめしう、疎ましきまでなん」と言ひ出でたるを

「かゝる事さへ出で来ぬとならば、なをはじめも聞こえしやうに、むすぶの神の契りをたがへぬさまにおぼしなりね。かくてのみは、誰が為もいとたへがたくなん。誰もく、なにとなく若き程なるこそ、内裏わたりなどにて常に同じ所にあるもつきく ゛ しけれ、をのく大人・上達部などにもなりぬれば、ことなる事なくてはえ内裏わたりなどにても御宿直もなし。里にても、かたみに行きあふ事、人目をおぼせばおぼろけならぬ限りはなく、見まほしきもあまりわりなきを、かゝるつゐでに身をなきになしつとおもして、聞こゆるさまに従ひ給ひね。かゝる御さまにてはいかでかあるべき事ぞ。たゞおぼせかし」

妊娠を告げると、宮の宰相はこれからは会える機会がもっと減るし大人になったら具合が悪いでしょう。
私の言うとおり、籠ってください」

と女君を説得しはじめます。両親の事を思うと決心のつかない女君ですが、

世づかずなりにける身を思知りしほどより、世にはあらであらばやと思ふ心は深くなりながら、殿・上のおぼさんところにはゞかりて、今まで世にながらえて、あやしき有様を人に御覧ぜられぬる事。わが身のはてもなくしなしつる、心憂くいみじきこと

「いとゞことはりなれど、すべてこはさるべきにこそは。かうなおぼし入りそ」

散々宮の宰相への愚痴をこぼすけれども男は「そのとおりだけどこれも運命です。そんなに悩みませんように

お前が原因やん。
お前がいうか???と本当に突っ込み所まんさいなキャラ

うらなくだにあらず忍びまぎるゝけしきを見るに、このほども又たゞならずなりにたるを、かうのみあまたになりにたる契りのほどを、浅からず知らるゝなるべしと見るに人柄のをかしうなまめきたる事こそ人にことなれ、かばかりの人に見をまかせて、入り居なん身の契りは、いと飽かぬことなるべきを、まいて、人の心きはめて頼もしげなく、あまりあだめき過ぎて好ましう色めき、たゞ今だに心ざし劣らぬさまに、絶えずひき忍ぶる心いと深し、まして今は、これはかうぞかしと、をだしう、常のことと目馴れて、つらき心も見るらん時は、いかばかりかはものの悔しう、人笑はれたるべきと思ひ続くるに、宰相の語らひにつかんことは、なをいと物し、かうてのみまた世に出で交らひ過ぐすべきならねば、いかにもく、わが身は世にもなうなりなんとするぞかしと思ひなるに

また四の君の所に着て夜這いをしてまた妊娠しているようだ。
あんな好色な男の下で暮らすなんて自分の運命を受け入れるなんて考えられない。
どうしょうか?薄情な時がきたらさぞかし恥ずかしく後悔するだろう。

ものすごい冷静な人物評価
適格すぎです。

そんな事をしらない宰相は女君が妊娠したならもう囲こわれるしかないと確信し、変に余裕が生まれる。

宰相は、かくことざまに思ひ続くる心の中をば知らず、今は我ものにこそ籠めすへ見るべけれと思ふに、いとわりなく惑はれし心は少しゆるび

中納言だにだて籠り居給なば、この人をも何事にかはつゝまん、さてこそは見めと思ふかねごとも、胸つぶれてうれしういみじき
に、左右の袖濡るゝ心地して

女君も囲い、この人もわがものにしてどう悪いのか?うれしいと涙している。
馬鹿じゃないか??

中納言は、さればよ、たゞかうぞかし、さばかり憂へかけつとならば、ひとへにいかなるべき事ぞなど、思ひ嘆きてもあらず、さてしも、あなたざまの深き心のあやにくに添ふべかめるよと思ふ。恨めしうもあれど、そのまゝに恨み言はんも、人わろく世づかぬ心地するに、思ひ忍びつゝさらぬ顔にいみじく物嘆かしきまゝに、心地もなをるともおぼえず。

そんな好色な姿をいやいやになってる女君、ほらあんなに口説いたのにもう四の君が気になってる。
私の気を使ってくれてもいいのに。だからなんだ。

口に出してはいわないが、嫉妬???でも完全に男を見限っている。

十二月つごもりがた、殿に参り給うへれば、大方は騒がしけれど、夜の間の隔てもおぼつかなくおぼしめしたる御心なれば、いつしかと待ちよろこびまもり聞え給に、あまりさかりににほひ給へりしかたちの、いたう面やせて打しめりてさぶらひ給を、胸つぶれて、「などいたく損じ給へる。なを心地の悪しきにや」との給。「わざと苦しと思ふところも侍らねど、例ならで久しう侍しなごりにや」と聞こえ給へば、「いと恐ろしき事。祈りをこそ又始むべかりけれ」とて、さるべき人く召して、御修法・祭・祓などすべき事の給を見聞くに、あはれ、かくおぼしたるに、跡はかなく消え失せなば、いかばかりの御思ひならんと見奉るに、え念ぜず、ほろくと涙のこぼれぬるをもてまぎらはせど、「あやしう思はずなるさまどもを、身の厄と思ひしに、命も尽くる心地しき。今は官位きはめ、出で交らひ給きはになりては、おほやけわたくし、人にほめられ面目あり。はかく ゛ しからぬ身のおもて起こし給へば、その嘆きをも慰みて、さるべきにこそありけめと、憂へを休むるきはに、かうのみ例ならず心地悪しげなるよりも、物思ひ嘆かれたるけしきの見ゆれば、いとこそわびしう、生けるかひなけれ」とてうち泣き給に、いと堪へがたうかなしくて、「何事をかは思ひ給へん。乱り心地の例ならず侍を、かくおぼし騒がせ給につけても、命さへ思にかなはず、御覧じはてられずやなりなんと、思ひ給ふるばかりにな
ん」と聞こえ慰めて、念じて、御前にて物参りなどすれば、いとゞうれしとおぼし慰めて、もろともに聞こしめす。母上は、中くいとあらくしくて、いかなる事をも見とがめ給はず。

お父ちゃん優しいやっぱ女君だから人一倍気にかかるのかな。
久々に実家に行ったらすごくやつれた女君を見て読経や祓をしないとと、親身になって涙するほど。そんな父を見て私がいなくなったらどうなる事かと涙が出てくる。
「御前の身の災難をどうしようと思っていたけど、出世をして私の名を上げてくれたので大変嬉しいのにそんなやんだ様子では生きてる張り合いもないよう。」と涙ぐむ。
その反面母親はなんとも思わない様子だ。

さて正月参内しいつもより大変美しく装束を整えボディーガード達にもおちゃれさせて、なにもかも美しく整え参内します。
春の宴会では桜の下で大変素晴らしい漢詩を詠んで帝から直接青色ネ包を手渡されてお礼の舞踏もすばらしくて様子も見ていた父もすっかりうれいがなくなって我が子の姿を見て感涙しました。当の女君はこれが最後と思うから心を込めて何事も行っていました。
帝のいたく感激され、この度右大将に昇格させて、宮の宰相も同じく素晴らしいので権中納言と昇格されました。

そんな時に
内裏などの宿直がちにさぶらひ給ふに、権中納言も参り給て、例の休み所に行きあひて語らふを、忍びやかに人の返ごとをぞ書く。うちけしきばみて取らすめる。隠せば隔て顔なり、隠さねばいとをしく、思ひわづらひたるけしきを、右の大殿の君のなめりとしるく見て、「いで、誰がぞ、見ん」と言ふに、いはん方なしと思へるおかしさに、たはぶれて引き奪ひたれば、つゆも隔て顔にはと思へば、えもひき隠さず。えもいはぬ紫の紙に、墨薄くあるかなきかの書きざま、たがふべくもあらず。あらず。「目の前のうれしさをぞ思ふらん」など、言ひやりたりける返事なるべし。
 宿直で二人揃ったときに権少納言(元の宮の宰相)が誰かに和歌を書いている。
随身に渡しているのが、特別な感じで「四の君から?」と思えるから、「誰からの手紙ですか?読んでみたい」と女君が言うと少納言は隠し立てしたくないから、相手が手に取るのを黙っている。
薄い紫色の文に薄墨で書いているのは四の君の筆でした。


 上に着る小夜の衣の袖よりも人知れぬをばたゞにやは聞く
とぞ書きたる。 見るに猶まばゆければ、「あまり薄墨にて、 何とこそ見えね。誰がぞよ」と、言ひまぎらはしてさしやりたれば、あまえて、「何事かある」とぞ問ふ。「いさ、たどくしくて、え見えず」とてやみぬ。心の中にぞ、男も女も、頼もしげなき物は人の心かな、この女君、見る目有様は児めかしうあてやかに、物遠きながら、かくこそは物し給けれ、うちくの我心こそ、いかゞはせんに思ひなさるれ、よその人聞き・ことの有様、我ためいみじき事也や、まして世の常ならんなべての人の心、いかならんと思ひやるに、いと憂けれど、今さらに何かは、露もものしげなるけしき見えんと思へば、女君にはかけてもけしきもらさず。

上に着る衣の袖の様にうわべだけの夫人知れず下着のようなひそかであっても真実愛するあなたの昇進を喜ばずにいられましょうか。
と書いている。
なんだかいやな感じだと目を背けてしまい「あんまり薄墨でなんてかいているのかわかりませんわ」
少納言は「なんと書いていましたか?」と聞いてくる。
「さあぼんやりと書いていてわかりません」といったきりこの話はやめにしました。

これを詠んだ女君
男も女も頼みにならないのは人の心だ。と悟。
世間ずれしていなくておとなしそうなのに他所で大胆な和歌を詠む。評判や秘密の逢瀬など自分には大問題なのに。
でも四の君にはまったくそんなそぶりを見せない。

めっちゃ冷静~~~女子その冷静さが雲隠れの時期を遅れさす。

四月にもなりぬれば、やうく身も所せく、ふるまひにくきほどになりゆくに、せめてさりげなくもてなし、忍び歩くもいと苦しきに、権中納言は、心やすくあひ見ぬ事のわりなきまゝに、「いかに、今までかくのみ。人目もあやしく、見とがむる人もあらん時は、いかにいみじからん」と言ひ知らせつゝ

四月になって身重の体が目立つにつけ、女君は決心しない。
たまりかねた権中納言が「どうして今のままここにいるのでしょうか?誰かにっどがめられたらどうするのですか」
とせまってくる。中納言は宇治に別荘がありそこに女君を籠めてしまおいとひそかに準備をしています。

さすがの女君もこのままでは大変な事になるのはわかっているので縁の方々にお別れにゆきます。

まずは吉野の宮

吉野の宮は予知能力があり、大体はわかっておられるが、やはり別れは辛い泣きながらも

さりとも、けしうはものし給はじ。たゞしばしの御心の乱れなり」とて、いと真心に護身など参り給。

いくらなんでもとんでもないことにはならない。今少しの心の乱れですと泣きながら心をこめてお祈りしてくださる。

「かゝるかたちを変へても、かならずこれをつゐの住処とうち頼み参り侍らんとなんするを、そのほどおもほし忘るなよ。いま三月ばかりなん、え参りをとづれきこえさすまじく侍。限りにつきぬる命ならば、これこそは限りに侍らめ

姿をかえて必ずここに戻ります。3か月ほどのお別れですが、寿命がつきればこれでお別れです。そうれなければ少しは今と違うまともな姿でお目にかかります。

宮も、見奉りしわたりことしあれば、よく護身参り給、御薬奉り給。

宮の女君に見抜いていることがあるのでよく読経してお薬などいろいろお渡しになる。

この後四の君と尚侍へ最後の御挨拶をさりげなくされるが、両親へは逆に心乱れて決心も鈍るから訪問しない。

藤の織物の御几丁、なでしこの御衣、青朽葉の小袿奉りて、御几丁よりほのく ゛ と見ゆる御有様、今はじめたる事ならねど、身を思ひ限るにつけても、いみじくあさましくおぼゆ

尚侍の様子を本来は自分がこのような姿なのだと思い知らされ涙する。

我ぞかくて有べきかしと、かたみに見交し給て、尽きせずあはれにかなしきことども聞え交し給て、いみじく泣き給も、あはれに立ち離れぐるし。

尚侍は尚侍で本来は私がこのような姿であったのにとお互い泣き合う。
ようやくなんとなくお互いの性の認識を共有できた感じです。

そしてようやくお供の者を先に帰らせて、中納言のひそかに用意させた車に乗り込み宇治へ二人向かう。
女君は笛を吹きながら中納言は豊浦の寺を歌っている。

第三章へ。

とうとう内籠って宇治へ向かう二人。
どうなる????

追記:さてこの章の宮の宰相は女君を男とわかっていながら情交しようとしたのですが、当時いや昔から日本男子の世界ではいわゆる男色はそんなにマイノリティーではありませんでした。
神話の世界は別にして
大伴禰家持、藤原朝臣久須麻呂に報へ贈る歌
夢のごと思はゆるかも愛しきやし君が使の数多く通えば 
春風の声にし出なればありさりて今ならずとも君がまにまに
藤原朝臣久須麻呂の来り報ふる歌二首
奥山の磐かげに生ふる菅の根のねもころ吾も相思はざれや
春雨を待つとにしあらし吾が屋戸の岩木の梅も未だ含めり
孝謙天皇は道祖王を先帝(聖武天皇)の喪中であるにもかかわらず侍童と姦淫をなし、先帝への服喪の礼を失いたとして廃宮を決定する理由にしている。
寺院では僧が女人禁止だったために寺で稚児を煌びやかに着飾らせて、相手をさせるのは普通だったし。

なんかがあり、そんなに異常な認識でもなかったようです。

ただし男色だけでなく女性もOKでいわば現在でいう所のバイだったわけですが。
菊花の約なんでもろ男色の話ですよね。
平安時代末期以降になると普通の事になってゆき、白河院、後白河院、藤原頼長とその相手秦公春・秦兼任公家では藤原忠雅・藤原為通・藤原公能・藤原隆季・藤原家明・藤原成親・源成雅権力者の間で大流行室町幕府の足利義満と世阿弥、義教、義政、戦国時代に至ってはしていない武将はいないくらい日常になり、江戸時代にいたっては影間という歌舞伎役者が遊女のように男に買われていました。
ただやはり男色のみというのは少ないようで、これも一つの遊び・かつ非常事態たとえば平安末期や戦国時代のような不安定なこの中になればなるほど一般的化していったといっていいでしょう。
いわば味方増やす的な、そういう関係の方が結束力がますというか。主従関係を太く出来るメリットに重きをえていたのでしょ。
さすがに明治時代になると欧米ではキリスト教で同性愛は禁止だったのでやいのやいのと明治政府は押さえつけ結果いわゆる地下世界になっただけで。
日本人はそういう性にはおおらかなもんです。本来は・・・・・。



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