とりかへばや物語 最終章 

ほどなく年月も過ぎかはりて、中宮、二、三の宮・姫宮などさへ産み奉り給へるを、かゝりける人の御宿世となべての世にも罪ゆるし聞えて、かたへの御方く ゛ も、我身をのみぞ恨み給べき

月日は流れ中宮んはその後、二の宮、三の宮や姫宮を御生みになられた。帝はこうなる運命だったのであの罪をお許しになってその他の方にお子が出来なかった事を恨むしかない。

さて女御で右大臣の女御は一番に入内したので私こそはと思っておられたが、帝の寵愛がないのに内裏にいてもと里へ下がられる。中宮は四の君と二人宮の権大納言の愛情を二分して恨んだが両家の浅からぬ運命を思っている。
右大将と四の君には男君三人。東宮腹の若君は殿上童され吉野の姫君の養子になられた。(ということはこの若君が右大将の後を継ぐ)生母の女院の御所にも参内して簾の中にも入って、打ち明けられない親子関係であるけでども、対面されている。
大納言と吉野の妹姫には二人の姫君と一人の若君がお生まれ、中の姫君を吉野の姉姫君の養子とされて愛されている。



大納言の人知れぬ宇治の若君も、今はいとおよすげ給にたれば、殿上し給て、大将殿の若君同じやうにてあまりき給ふを、中宮は、御覧ずるにいとかなしう、春宮・宮くの御事にも劣らず、見る度ごとにあはれにかなしうおぼさるゝに、

中宮が生んだ大納言の若君も殿上童で中宮の目にとまり悲しい限り見るたびに可哀そうだと嘆いている。

春のつれく ゛のどやかなる昼つ方、二の宮と若君と遊びつゝこの御方に渡らせ給へるが、いとよくうちかよひて、かれはいますこしにほひやかに愛行ずきたるさまさへこよなく見ゆるも、めざましくあはれに忍びがたく、御前に人あまたもあらぬほどなれば心やすくて、御簾の内に呼び入れ給へば、宮は入らせ給ぬれど入らぬを、「猶入り給へ。くるしかなう事ぞ」との給へば、縁にやをらうちかこまりて御簾をひき着てさぶらふが、いみじううつくしきを御覧づるに、今はと引離れて乳母にゆづり取らせて忍び出し宵の事おぼしめし出づに、今の心地せさせ給てかなしければ、あやしとや思はんと、しいてもて隠給へど、御涙こぼれていと堪へがたきを、をしのごひ隠して、「君の御母と聞えけん人は知り給へりや。大納言はいかゞの給」と問はせ給へば、
つれずれの春のある日、のどかな昼間二宮とこの若君が中宮の御所に遊びにきている。二人はとても良く似ていて、若君は愛嬌があたりこぼれすほどでしみじみと愛しくてやるせない思いを隠しけれそうにない。
まわりに女房がいない時間であったので、「おはいりなさい」と二人に話しかけた二宮はすぐに簾の中へと入ったが若君はおそれおおいと入ろうとはしなかった。「おはいりなさい。迷惑はありません」そういうと頭の上に簾が乗るくらいに体を半分いれている。
その姿があまりにかわいいので乳母に手渡して別れたあの夜を思い出して中宮はせつなくなる。悲しくてしかたなく変だと思われないか。と無理に涙が耐え難いが無理にふいておかくしになる。

「あなたのお母様という人を知っていますか?大納言殿はなんていってますか?」と問いかける。

やうく物の心知り給まゝに、いかに成給ひけんとおぼつかなく、大納言も乳母も明暮れ言ひ出て恋ひ泣き給めれど、行方も知らぬ人の御事を、見る目・有様はいとうつくしう若くて、うち泣きていとあはれとおぼしての給ふが、もしこれやそれに物し給ふらんと思ひ寄るより、いみじくあはれなれど、これはさやうなるべき人の御有様かは、行方なく〔人に思ひまがへられ給ふべき〕人にも物し給はずと、いとおよすげておぼし続けられて、うちまめだちて物もの給はぬを、いかにおぼすにかとあはれにて、つくく ゛とうちまもりて、御袖を顔に押しあてていみじう泣かせ給へば、この君もうちうつぶして涙のこぼるゝけしきなるがいとかなしければ

物心つくと父も乳母もあけくれなく恋しがって泣いている母の姿をこの美しくて若い中宮が泣いている様子を見て、この方が母上か?いやいやこのお方は姿を消して行方不明で他人に間違わられる方ではいらっしゃらない。とにこりともされずにだまっている。
「どうおもっているのか?」とあわれで中宮はじっと見守っては涙を袖でおふきになる。
若君を頭を下げて泣いている。

少し近く居寄りて、髪などかきなでて、「君の御母、さるべくゆかり有人なれば、御ことをいと忘れがたく恋ひ聞ゆめるを見るが心苦しければ、かく聞えつるぞよ。大納言などは、今世になき人とぞ知り給へらん。さこそありしかとまねび給なよ。たゞ御心ひとつに、さる人は世にある物とおぼしてと語らひ給へば、いとあはれと思たるけしきにてうちうなづきて居たるが、いみじううつくしう離れがたき心地せさせ給へど、二の宮走りおはして、「いざ」とて引き立てておはしぬるなごりも飽かずかなしければ、端に猶涙をこぼしつゝ見をくりて臥し給へる。十一にや成給ふらん、髪は脛のほどにゆるくとかゝりてうつくしげにて、宮くにうちかしこまりたるなど、いとあはれなれば、


中宮は少し近寄って髪をなでながら、「あなたのお母様は私の縁の方でした。あなたの事を忘れた事がなくいつも恋しいと嘆き悲しんでいるので、あまりにおきのどくでこうしてお話しているのです。父上はこの世にはおいでではないとお考えでしょう。こういう話でしたと御話してはいけません。あなたの心の中で母上はいきているとお考えください。しかるべく時にはこ辺においでなさい。こっそりお見せしましょう」とおっしゃると若君は大変悲しい事だという表情をしてうなずかれる。あまりにかわいいので離れがたくいるところに二宮がきて「さあ!いくぞ」といって若君の手をとり、いってしまった。
きゅうな別れだったので、端近い所で涙ながらに見送って泣き崩れておられる。
若君は11歳におなりで下げ髪が膝あたりで、ほかの宮にたいそう礼をつくしておられるのがいじらしい。

  
同じ巣にかへるとならば田鶴の子のなどて雲居のよそになりけん
同じ母から生まれた子が何故に内裏の外で離れて暮らしているのか?


とて、いみじく泣かせ給を、帝渡らせ給て、やをら物のはさまより御覧じけるに、此若君に向ひゐて泣くく語らひ給を、あやしとおぼしめして、音なくていつとなく御覧じけるに、かゝる事どもあり。

たいそうっ中宮が泣いている様子を「あやしい」と最初から見ていた帝は納得した。

さればよ、有やうあらんと思ひつかし、此若君は、さはこの宮の御腹也、あやしく母なん誰とも聞えで、明け暮れ涙の川に浮き沈み、これをかたはらさけず生ほし立てけると聞くは、むべなりけり、ひとゝせ、いとひさしく悩み給とて、春宮へも参らず年なかばばかり絶え籠りたりしも、此程の事なめりとおぼすに、やがてこの君の年の程などおぼすに、疑ひなく心得はて給に、年ごろなをおぼつかなく、誰とだに知らぬいぶせさをさりげなくておぼしわたりつるを、御覧じあらはしつるもいとうれしかりけり。大臣の知りながら許さずなりにけるも、いかばかりあさはかなる人にかとなま心劣りしつるを、これはしも、帝と聞ゆとも、少くかたほならんは何にかはせん、人柄・かたち・有様をはじめていとめづらかなめる人なれば、さまで思ひ寄るまじきほどの御仲らひにはあらざりけんを、せめて上なく思ひをごりけん心ざしの違はん本意なさ、また人柄のせめてあだに頼みがたく、右の大臣わたりになどめづらしげなきやうならんなどを、深く思ひはゞかりて、許さず成にけるならんかし、いかに男も女もかたみに心の中物思はしからんと、いとほしう推し量られさせ給。

そうなのだ何かわけがあるのだと思った。
あの若君は中宮の腹の子供なのだ大納言が母を誰とも聞かれずにたいそう悲しんでは愛情傾けて育てたと聞いている。
中宮が病気を理由に長く内裏から離れていたのは出産の為であったのか。と思われ若君の年齢とも合点がいったので、長い間中宮の相手が気になっていたのでその理由がとけたのも大変嬉しくお思いでした。
「父左大臣が許さなかった相手が身分違いの人だと失望したが、相手が大納言ならなんの不足があろう。しかし左大臣としては后にとお思いであったから許されなかったのだろう。しかも大納言は浮気性で右大臣の姫にも通っていたようだから二人の仲をお許しでなかったのだろう。やるせないお気持ちだったろう。」

なをけしきもゆかしければ、今おはしますやうにてたち出でさせ給へるにぞ、をしのごひ隠して起き上がり給へる御さま、日ごろは何ともおぼしめしさだめざりけるを、宮くと交りて遊ぶめるさまのいとよくうちかよひたるも、今まで見さだめざりける心遅さも、おかしうおぼしめさるべし。

様子を知りたいので今きた風に中宮の元においでになり、中宮が涙をふいてお立ちになる姿が日頃はなんとも思わなかったが宮たちと遊んでいる若君によく似ているのを、どうしてきずかなかったのかとあきれてしまう。

帝超寛大

「大将の朝臣・源大納言など、今は老上達部になりはてて、かたち人なき心地するに、この末く ゛ 多くなりて、さらに劣るまじきかたち有様なめるこそ、なかく世の末、さるべからん折はこのわたりにつねに物し給へ。忍びて見せ聞えんにしも有職多かりぬべかなるかな。此君、大将の四の君腹の太郎などこそ、今よりさまことなめれ。大将の大若君、この君との母、誰とも聞えぬこそあやしけれど、大将のは、女院の御あたりのことにやと世人さゝめくめりし、げに、なをさなるべしとしるき人ざま、けはひけだかく、なまめかしさ、さばかりにこそあらんかし。これこそは、いかにも言ひ出る事なかめれ。いさや、人は知たらめども、まろにまねぶ人のなきにや」と、うちほゝ笑ませ給ふ御けしき、

「大将や大納言は今は老人の上達部になってしまって、内裏に美貌の若人がいなくなった気もするが、あなたの血縁者が増えていずれいとなる容貌の若君たちがかえって私の世の最後に優れた殿上人が多くなった気がする。特にあの若君(中宮の子)、右大将の四の君腹の太郎君などとくによい。それにしても右大将の大若君と大納言の若君の母は誰も知られてないが?大若君は女院さま(元東宮)がご出産されたと皆がいっている。なるほどそうなのでしょう・明らかな顔や姿、風貌はそういう雰囲気を持っている。あの若君の方は噂されることがない。どなたか私に教えてくれる人はいないかな?」
と微笑まれる。

もし、わがありつるけしきを、あやしとは御覧じけるにやと心得らるゝぞ、わびしけりける。「いさ、これは知らず。大将の若君のことは、うたて、女院の御ためあはくしきやうなる事をの給はするかな。異人の事や侍らん。この御事ばかりは、まろ知らではいかでかさる事の侍らん」との給へば、「されば、まろ知り給へる事とこそ人く言ふなりしか。げに、さまで誰がためもかたはなるまじきほどの事なれば、いとよしや。さは、此事は知り給はざなり。いまひとつは知り給へりや。それこそまた知らまほしけれ」とおほせらるゝに、聞えん方なければ、御顔いと赤くなりてうちそむき給ぬるうつくしげさぞ、たぐひなき。いみじきとが・あやまちありとも、うち見ん人ばかりだに何のとがも消え失せぬべき御有様を、まして年月かさなるまゝに梨原にのみなり行く御心は、いかなるにつけても、いよく御心ざし深くのみこそなりまさらせ給めれ。

「もしやさきほどの私の姿をみておかしいと思われたのか?」
思われたのが中宮にはひどく苦しい。

「さあ若君の事は存じません。いやですわ。女院さまに軽々しい事を別人でしょう。そんな事になったら私が知らないですむでしょうか?」

「なのであなたも知っていう事だと皆いっているのですよ。実際あなたにとっても他にとっても不都合なことではありません。よしではこのことはご存じないのでですね。ではもうひとつの事はそちらを知りたいのです。誰か私に教えてくれる人はいないかな」と帝がおっしゃるので、中宮はお顔を真っ赤にして、そっぽを向かれた愛らしさを格別
どんな過ちも失敗もこの姿を見たらたちまち、怒りも消え去る様子だ。しかも年を重ねこの方ばかりに宮がお生まれなので帝の愛情は増すばかり。

何事にかは御心劣りせさせ給はん。うちかさねて御殿籠りぬ。


この夜も二人寝所で抱き合ってお眠りになる。


若君は、ありつるなごり、何となく物あはれにて、まかで給て、御乳母にぞ忍びて、「まろが親にやとおぼゆる人をこそ見奉りつれ。「殿にな申そ」とありつれば、申まじ」とて、いとあはれにかなしくなりて、

内裏から戻った若君はしんみりと悲しくてたまらず乳母にこっそり「僕の母上と思われる方と出会ったよ。父上には知らせないで言わないと。」と涙を目にいっぱい浮かべてお話すしになる。

「いかにく。いづくに物せさせ給へるぞ。いかでさは知り給へる。御かたち有様はいかゞおはしつる」と言へば、

まあどうして!どこにおわれたのですか?どういうご様子でしたか?

御かたち有様はいと若くうつくしげにて、この母上よりもいま少し愛行づきけだかく物し給へる。さぞとの給ひ知らする事はなかりつれど、たゞ、「母といふ物は世には有とばかり思ひ出よ」とて、いみじう泣き給へる」とて、いとあはれにおぼしたる御けしきにて、なをいづくに物し給へるとはの給ひ出ぬを、

姿かたちはとてもお若くて美しく、今の母上よりも少し愛嬌がおわりになる。そうだとおっしゃりはしなかったが、母はこの世においでになると思ってください。とたいそう泣いておっしゃった。としんみりお話になる。

いとおぼつかなくて、「殿の、さばかり寝てもさめても恋ひかなしみ奉り給に、さは世におはしましけりと、いみじく聞かせ奉らまほしきを、いかなればさは忍び給にか。いかで君をば見給し」と言へば、「「殿にはかくとな聞えそ」とこその給ひしに、いま又逢ひたらんに申て、「殿にも申せ」とあらん折こそ申さめ。たゞ今はな聞こえそ」と口がため給も、幼き人ともなく、いとうつくしういはけなからず物し給ふと見奉る。

どこにいらしたとおっしゃらないので気になり。「父君様がひとえに恋しいとおっしゃっているのに。何故かくしておっしゃらないのか?どこでお見掛けしたのか?」と乳母が効くと「父君にはいうてくれるな。またお逢いした時にお聞きしていいとおっしゃればお話しする。だまっていて」と口止めされる。幼くてもたいそう幼稚ではいらっしゃらぬと拝見する。


えらい!!!若君 作者あっぱれ!!

まことや、大将殿は、麗景殿の人は、さすがに行く手にはおぼし捨ててやみ給はんも心苦しかるべき人ざまなれば、さりぬべきおりくは忍びに語らひ給ふほどに、いとうつくしき姫君一人生まれ給しを、四の君腹の姫君たちはなちては女も物し給はねば、いと心苦しうおぼして、殿へ迎へ聞えんとおぼしたるを、麗景殿の、女宮だになどかおはしまさざらんと世とともに嘆き給に、此君のかくうつくしうて生まれ出給へれば、いみじうかなしうし奉り給てえはなち聞え給はねば、大将殿もいとよしとおぼして、女御の御事をもさるべきさまに後見聞え給へば、中宮の御有様のかたはら苦しげなめるにたち交りたるも、いと人わろき事多くはしたなき心地せしも、こよなく、さる方に心苦しき物に心寄せ仕うまつり給にぞ、何事ももて隠され給ける。

その後右大将は麗景殿の妹君の所に通われているうちにたいそうかわいい女君がお生まれになった。
大将は引き取りたいと要望したが姉君の麗景殿女御が愛して手元に置きたいと切望します。
よき後見と右大将が承知して、麗景殿女御に子がいなかったので肩身が狭いが少しは心が軽くなった。


年月も過ぎかはりて、大殿御髪おろし給、右の大臣太政大臣になり給などして、大将殿左大臣になり給て関白し給。宮の大納言、内大臣にて大将かけ給ふ。若君たちも元服し給て、中将・少将とみな聞ゆめり。帝もおりさせ給ひぬれば、春宮位につかせ給、二の宮坊にゐさせ給。今の関白殿の四の君腹の大姫君、女御に参り給て藤壺にさぶらひ給。うちつゞき、此麗景殿にて生ひ出給し姫君、春宮に女御に参り給ふ。

年月も過ぎ父の左大臣は出家、右大臣は太政大臣となり。右大将は左大臣で関白を兼ねられる。宮の大納言は内大臣で右大将を兼ねられる。若君裁達も元服して中将・少将になられた。
帝の譲位して東宮が即位され二の宮が東宮になられた。
今関白の四の君腹の姉姫君(但実夫今の内大臣)が帝の藤壺女御として入内し、麗景殿の君腹の姫を東宮女御になられる。



さまく ゛ 思ふさまにめでたく御心ゆくなかにも、内の大臣は、年月過ぎかはり世の中のあらたまるにつけても、思ひあはする方だになくてやみにし宇治の河波は、袖にかゝらぬ時の間なく、三位中将のおよすげ給まゝに、人よりことなる御さま・かたち・才のほどなどを見給につけては、いかばかりの心にて、これをかく見ず知らず跡を絶ちてやみなんと思ひ離れけんと思ふに、憂くもつらくも恋しくも、ひとかたならずかなしとや

おもうがまま立派になるなかで内大臣だけが、あの女君のことを忘れられずに若君が三位中将になられ風貌や才能が開花して、りっぱになるにつれこのような者を残して去った女君の事を忘れずにいて涙している。

ということは中宮から言ってもいいよとお許しがでなかったのね。

最後まで馬鹿内大臣~~~ここまで徹底してるとピエロだ~~~~



はあ ~~~~面白かった。この作者凄腕

現代訳かなりかなりおおざっぱにしています
ぜに書籍でお買い求めください。読み応えあります。
話の展開といい、流れといい今でも十分楽しめます。この物語は君の名は・・・・・でインスピレーションを感じて世界で大ヒットしたといので世界的にも十分通用するのでは???

さてこのとりかへばや物語は鎌倉時代の文学評論書というべき、無名草子で源氏物語以降の物語の中でなかなか面白いとある程度評価されている。

げに源氏よる先の物語どもうつぼを始めてあまた見てはべるこそ旨いと見どころ少なくはべれ。
個体にし古めかしきはことわり言葉遣ひ歌などはさせることはくはべるは万葉集などの風情に及びはべぬるし などただ今聞こゆる今とりかへばやなどのもとにまさはべるまよ 何事もものまねびは必ずもとには劣るさざなるをこれはいと憎からず
をかしくこそあめれな。言葉遣い歌なども悪いもなし。おびただしく恐ろしくところもなかめり。

四の君これは憎き
女中納言いとよくこそあれ
尚侍いとよし

宮の宰相こそいと心おくれたれと酷評しています。
今とりかえばやとあるのですが、実はこのころ古とりかえばやと改訂版の今とりかえばやが存在していました。
古とりかへばやの写本は現在存在しません。
内容はふめいですがこの無名草子によると中納言は男姿のままどうやら若君を出産したようで、一度死に蘇生したようです。
なんか変わった道具も使われて????らしい???・・・・・・・。わが身をたどる姫君くらいえげつない話だったかも・・・・・。

さて実はこれもパクリ題で「有明の月の別れ」という話もあります。これは女一人で男になる物語でかなり無茶な設定。
子供の出来ない左大臣家でようやく女の子が誕生神のお告げで男子として出仕、彼女は隠れ蓑の術が使えてある日に公卿の家に入った所養父が義子の寝所に忍んで妊娠させられた子を表向き妻にして若君が誕生、その邸宅に殿上人が夜這いして女の子が誕生。ここで左大臣は後継ぎが出来たと喜んでいたやさきに。
帝によって女にされた右大将、突然死んだことにされ、喪が明けると入内して宮を生む。
右大将の妻は出家して右大臣家で大切にされて幸せ幸せ?????いまいち?????な話

とりかへばや物語のテーマは愛


まずは父と子の愛(大納言と二人の兄妹・吉野の宮・二人の姉妹)
親友の愛 (女中納言と宮の宰相)
兄妹愛女中納言と尚侍)・姉妹愛(吉野の宮姫君)
愛(宮の宰相と四の君・宮の宰相と女中納言・吉野の妹君・帝と尚侍・右大将と東宮・四の君・吉野の姉姫君・麗景殿の君)
母と子の愛(女中納言と若君・吉野の姉君と大若君乙姫君・吉野の妹君・若君・元東宮と大若君)

愛愛愛なのだ!!!  
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とりかへばや物語 第六章 

さて話は外れて右大将の二条殿が完成したので、吉野の姫君をお迎えようと三月十何日に右大将が吉野の宮邸を訪問する。
吉野の宮は姫君たちと右大将に今生の別れと二人を京へ送り出し自分はさらに山奥で修業を行う。
姫君たちは二条殿で大君は右大将の正妻として中央の御殿へ入られる。二条殿は大変大きく二町を築地を設けてさらに三か所に区切っている。中央を正殿に洞院通りにある御殿に四の君をひっそりとお迎えして、堀川通りの御殿に尚侍の里と東宮の御殿にとか投げている。
りっぱな入場に右大臣は四の君こそ正妻にと悔しい思いだが、右大将の責任だけではないので心中複雑だった。
四の君の右大将の子を妊娠していたが、なんだか気もひけて御隠しになっていたが、ようやく右大将を四の君の縁を感じつつ吉野の姫君にいまだ懐妊の兆しがないのを残念に思い。東宮の若君を引き取ろうとするも左大臣が鐘愛して右大将にも会わせない様子なのでどうしようもない。尚侍もこの春から懐妊されて帝は東宮もおいでにならないので寺社仏閣に祈祷をおめいじになっている。

さて権中納言はまだ右大将があの女君に信じて疑いないから悔しいやらなさけないやら恨めしいやらで悶々としている。そんな折四の君の乳母子左衛門を呼び寄せて右大将近辺の情報を聞き出そうとしている。
しかも左衛門に夜這いの手引きを言う始末。さすがに左衛門もこれにはぴしゃり。四の君の妊娠に右大将様も愛情が深くなるにつれ今はこちらにばかりおいでになるが、正妻の座を吉野の姫君に奪われたのが残念でそれが中納言のせいと思えばなおさらと愚痴を言われる。

そりゃそだろ・・・・・・。


中納言は右大将が女を妊娠させられるのか?どうも合点がいかずにどうしても本人に会いたくてしょうがなくなる。
超ストーカー!!!!

始る。折しも尚侍妊娠に内裏で過ごす日がおおい右大将、その近辺に影のように中納言がつきまとっている。右大将もどうしたものか?いっその事相手の決まっていない妹君の婿にとも思うが、右大臣の一見と尚侍の一見を考えればバカらしいとも思われる。

そんな四月二十何日かくらい内裏にとくに用事がない頃、

四月廿日あまり、祭など過て内わたりつれく ゛ なる比、督の君の物のついでに語り出で給し麗景殿の細殿の事おぼし出でて、そなたざまにおはしてたゝずみ給を、女は、何となくなつかしくうち語らひ給し夜なくのこと忘るゝ世なく、世の中に跡絶へ給りしころも、たゞ我身ひとつの事と恋しくかなしく思ひ出で聞えし人なれば、今宵もつくく ゛ と端をながめて居たるほどに、世目にもしるき御有様、さよと心得るに、あさましう音なくて月比も過ぎ給を恨めしくおぼえければ、心騒ぎして、物聞えんと思へど、ふとしも聞こえ出づべき心地もせねば、なを見けりとは知られまほしくて思ひ出づる人しもあらじ物ゆへに見し夜のつ月の忘られぬかなとうち嘆く人のあるは、この聞し人なるべしとおぼすに、同じ心なりけるもおかしうて、立寄り給て、

思ひ出づる人しもあらじ物ゆへに見し夜のつ月の忘られぬかな

おどろかす人こそなけれもろともに見し夜の月を忘れやはする

との給ふ御声けはひ、朝夕聞き馴れし人だに聞分き給はざりしかば、まして異人と思ひ寄らず。例の、なつかしげになにくれと語らひ給て立ち給へり。昔もかやうなる宵くは目馴れしかば、今とても世の常の乱りがはしき御もてなしは有べきならねば、うちたゆみたるに、大将は、おぼしやりつるよりもにくからぬ人ざま・けはひの、いとなつかしうよしめけるも過ぐしがたくて、やをらすべり入りて、戸ををし立て給へるにあさましくあきれて、「思はずにあさましかりける御心のほど」とあはむれど、いとのどやかに、騒ぐべきにもあらず。うちたゆめて、やうく隔てなくなり行き給をば、いかゞせん。月比のおぼつかなさ、思ひあまりておどろかし聞えてけるくやしさも、今ぞ思ひ知られて、うち泣かれぬる。男君、見給ふあたりの御有様どものつらにはいかでかあらん、なべてにはにくからず、世馴れたる宮仕へ人のつらにてはたあらざめるを、心苦しく、人のためいとおしく思ひやりなきわざをもしつるかなとおぼせど、たゞ今はいとなつかしく浅からずうち語らひ給。

麗景殿の女御の妹君が右大将の気配にきずいて和歌を詠みます。二人で月を見て昔のようにお話をするだけの女君のつもりが当然右大将は男なので、戸のある方へ女を連れ込んで体を合わせてきた。女はそんなつもりはなかったが、無理に抵抗するでなくやんわり否定、でももう右大将は止まらない。そのままアバンチュールIN night
情交後女君は泣いている。
男は慰めながらいい感じで二人部屋から出てくる。涙にくれる女にあれこれ慰めている男
この情景をがんみしていたのが中納言!!!

「どういうことが???もはや別人なのか?」

おそいわ!!!


あさましきに思ひのどめん方なくて、たち出づるまゝに直衣の袖ひかへたれば、「誰そ」とおぼえなくて見返り給へれば、この中納言なりけり。かゝる有様のかろく ゛しさを見あらはさねぬる事、人よりはねたくおぼせど、さりげなくもてなして立ちとゞまり給へれば、「をのづから見し人ともおぼしたらず、ことの外にもて離れ、おぼし捨てはてらるゝ身の恨めしさに、かくだに聞え侍らじと思ふ給へながら、従はぬ心のほども、我ながらもどかしう思ふ給へ知らぬには侍らねど」と言ふまゝに、涙をほろくとこぼし給へれば、うち笑ひて、「いかなりける御旅寝のなごり露けさを、かの慰めやり給はぬほどの御けしきぞよと。もことには、心のどかに聞えまほしき侍れどさすがに、なにとなき若公達なる程こそかやうなるもつきく ゛ そけれ、今はいとつきなきほどの位に我も人もなりのぼりにたえれば聞えぬを、をろかなる物におぼしめしなさるゝも、げにことはりに侍。をこたりも、わざと参りなん申侍べき」との給へるさま、さはいへど、をしのけたるよそ目こそあれ、かやうに近やかにて物などの給へるには、まことの男は又しるきわざなるを、返々あやしくて、とみにもゆるさで立ち給へり。有り後、またかばかり近くて見奉る事もなきに、やうく明けはなるゝそらのけしきくもりなきに、つくく ゛ と見給へば、御ひげのわたりなどことの外にけしきばみけるも、いなや、こは誰ぞ、さらばありし人はいづちへ失せ、給にしぞと、返々心得がたくて、とばかりまぼり立てるを、大将は、さ思ふよとおかしくて、さすがにはしたなき心地すれば、いたく明かくなりぬるはいと見苦しうて、歩みのき給て、宣耀殿へ参り給て女房など起こして、督の君の御迎へに参り給ぬめり。

ようやく会えた右大将の袖を掴んで恨み節の中納言、それに対してクールな右大将「どんな旅寝でそんなに泣いておられるのか?そうそう会えない身分にお互いなりましたね。そのせいで疎遠になった事をおうらみか。そのうちお詫びできる機会をもうけましょう」
そうこう話していると朝が来て日が差してきた。右大将の顔をよくみると顎あたりに黒々と髭が生えている????
あぁ見苦しいなとそのまま尚侍の御殿へいってしまった。
呆然の中納言

すごい笑える場面です。

でこの人また人の邸に入り込みます。ほんと住居侵入で今なら間違いなく逮捕よん。
丁度右大将は右大臣邸にいて、ここで吉野の姫君を垣間見しちゃいます。
このシーン源氏物語宇治十帖の八条宮の姫君たちを香が垣間見する場面の御パクリです。あえて消去


慰め給ける。大将は、なをこの中の君をや中納言にあはせてまし、内侍の督の君も、さりげなくてこの若君の事をいとおぼつかなくおぼしたるにも、さやうのゆかりなくていかでか聞給ふべきなど、やうくおぼしなる。

右大将は吉野の妹君に中納言婿にすべきか?尚侍さまも口に出しては言わないけでど若君の事を気にしておられるし。とお考えである。

六月十余日に、内侍の督の御方に、泉などいとおもしろく、池に造りかけたる釣殿などいみじう涼しげなるに、女君・中の君具し聞えて渡り給て、さるべき殿上人・上達部など文作り、雅楽頭などして、昼より遊び暮らしたまひて、月さし出づるほどに宮の中納言に御消息聞え給へり。蔵人の兵衛の佐とて、母上の御甥なる人奉りたまふ。

さあ右大将が行動にでます。
尚侍の御殿で宴を開催するので母の甥を使いに中納言邸へ差し向けます。
戸惑いながら直衣の準備をしてそうそうに二条殿へ。
そこで宴の余興に楽器で演奏。
酔った感じでこういう夜は女性との合奏もいいですよ。と近くに姫君達がいるのをうかがう。そんなこんなで客も返り人も少なくなっつた頃中納言は本題へ。

人く ゛ もかたへはまかでぬるに、中納言は近くゐ寄り給て、「わざと召し侍つるしるしは何事にか侍べき。をろならぬ御をくり物などの侍べきぞ」と聞こえ給へば、「いかでかたゞには侍らん。なべてにはあらぬ御引出物侍らば、日ごろの御恨みは残りなくとけ給ひなんや」と、打ほゝ笑みて聞こえ給へば、
  「昔見し宇治の橋姫それならでうらみとくべきかたはあらじを
いかなる世にか」とて、をしのごひ隠し給へり。
  「橋姫は衣かたしき待ちわびて身を宇治川に投げてし物を

私を呼んだ理由が知りたいと右大将に詰め寄る。引出物もあるのでしょうね。
この引出物とは女の事でってか物呼ばわりか???

右大将がつかさず、その引出物をお渡ししたら恨みをといてくれえますか?

ここで中納言
昔会ったあの宇治の橋姫のようなあの女君に会わせてください。でないと恨みは解くわけにはいきません。

橋姫は片袖をひいてもむなしいので身をはかなんで宇治川に投げてしまいました。その女を所望ですか?
では私の引き出物はいらないのですね。私の方もやめましょう。

おお~~~応酬~~~~

でも今日の引き出物にも興味がある。めっちゃ酔ったふりして、今宵もふけたこのまま帰れませんよ。簾の前で今晩過ごします。
右大将そんなら中へどうぞ。吉野の姉君と奥へ引っ込んでしまう。
強引に簾の中にはいる中納言あの女君だったらと期待するも勿論違います。

さすがの好色中納言中にいる姫君を抱きしめると愛らしい雰囲気がはっきりわかった。当然あの女君ではない。
しかしあの折の琵琶の女であると確信した。そのまま契りを結ぶ。
朝日が昇り姫君の顔をみるとあの女君におとらぬ可愛らしい美しさ、お話の様子もいい具合で、大変心を慰められる。

朝もまだ二人でいるので、右大将は朝ごはんを届けさせてお世話をやいている。
情交の後右大将と中納言はしんみりと昔の話をして打ち解けた様子でもやはり右大将がまだ女君では?
若君の事を寄せて情を掻き立てようとするもその子を今の姫君の親という解釈でファと流す。
以後の中納言の二条殿通いは続き世間では中納言が吉野の妹君の婿になられた。
心が広い右大将様だとまた右大将の株があがりあれくらいの男だからと中納言は下がる。

七月に妊娠六か月になった尚侍が里御殿へ下がられた。
近くに中納言がいる気配がするから気が気ではないし昔を思い涙する。
マリッジブルーもありか?

九月に右大将の若君が生まれ、ほどなく尚侍は男宮を生れた。
その祝いが続々と二条殿へくるにつれてあの宇治の若君を思い出しては涙される。


とうつくしげに大きに王気づきておはしますを、たゞ人知れず人の生まれ給へりしほどとおぼゆるに、いみじうあはれにて、御涙ぞほろほろとこぼれぬる

ひたぶるに思ひ出でじと思ふ世に忘れがたみのなに残りけん


その頃人事異動があり右大将はそのまま兼任で内大臣になり、中納言も大納言に昇進した。
前回の昇進の思い出がつのり大納言がまた泣いている。
邸に置いている若君と乳母も迎えて、吉野の姫君が愛しそうに面倒を見られる。乳母はもしや女君かもと期待したが、違うので残念に思うも姫君の感じがいいのである時に女君の話を涙ながらに姫君に打ち明けた。
姫君もこんなちょっとの間でも愛しいと思うのにどういうお気持ちだったんでしょね。」
乳母は実は吉野の姫君の姉かと疑っている。姫君は違うとはっきり伝えた。
そんなこんなしてると女東宮がまた東宮を辞退したいと申し出て男宮がおられるので生後50日でこの宮が東宮になられ、女東宮は女院となられました。右大将はかわらない後見をされて、父院はうれしい限りで尚侍は東宮の生母ということで女御に四月には中宮(帝の正妃)になられた。大納言は右大将の好意で中宮大夫に兼任される。
ってか中宮職の長官ですよ。傍に女君がいるのに・・・・・・本当に馬鹿な男です。

若君の、今はいとよく物などの給て走り遊び給ふにも、忘るゝ世なきことはまづおぼし出でられて、さてもいかなりし事とだに聞あきらめぬよ、さりとも、この女君はけしき心得給事もあらんとおぼせば、おりくけしきとりて問ひ給へど、心も得ぬけしきなるを、猶おぼつかなさに、

若君がおしゃべりをされたり、走ったりされては遊ぶのを見ると忘れられない昔を思い出し、さすがに吉野の姫君はごぞんじだろうと思うのでそれとなく探り始める。

ここ結構おもしろい応酬


「此大将の君は、いつごろより吉野山にはまうで給しぞ」と問へば、「いさ、中納言など聞こえしより、ときく ゛
おはすとこそ聞きしか」との給ふ。「此女君には、いつより住み給ふぞ。いかにしてかおはしそめし」などこまかに問ひ給へば、「おとゝしばかりにやあらん。知らず」と言ひまぎらはしてやみ給を、

右大将はいつごろから吉野にいらっしゃっているのですか?聞くと「中納言とおっしゃった頃からかしら?」
「姉姫君の所にはいつごろから通っておられるのか?」「さア一昨年くらいかしら。あまり知らない。」など言葉をにごす。


恨み給て、「我ぞ、年比又なく物を思ひて、はてくは病ひにもなり命も絶えぬべかりしかど、思ひかけず見初め聞えしよりこそ、こよなくこの世にとまる心も出で来て、又なく隔てなく限りなき物に思ひ聞ゆるを、さりとも見知り給はずもあらじを、こよなき御心の隔てこそ、いとうたて思はずなれ。思ひ聞ゆる片端もおぼさましかば、おぼつかなくゆかしき事も、知り給へらんまゝにはの給ひてましを」と恨むれば、

その様子に恨みながら「私が長年の思いわずらをしていて病気の様になっていたのを思いがけずにあなたと出会い生きる気力がでてきたのに。愛しい人を思っているのにそんな私に心の隔たりをつくるなんてあんまりです。私の不安をはっきりとおっしゃってくださいな。」


うちほゝ笑みて、「隔て聞ゆる事は何事にか。御心こそ隔て有て、ありのまゝにはの給はざめれ。御心の中をくみてもいかゞは聞ゆべからん」との給ふも、げにことはりなれば、打笑ひて、「隔て聞ゆとも思はねど、うち出で聞ゆべき方なき事はをのづからさなんある。聞こえさせずとも、その事にやとほのく ゛ 心得給事あらば、の給出でよかし。まろもそれにつきて、はじめよりの事も聞えん」と言へば、「御心の中に知り給たなる事をだにうち出にくゝおぼす事を、まいてほのく ゛ 心得んばかりにては、いかでか聞えも出でん。御心にかへて、たゞおぼせかし」とてうち笑ふも、いとにくからぬ人ざまなれば、見るかひありうれしくて、かゝらぬ人ならましかば、いかにいとゞわびしからましとおぼす。女君は、さだくと言ひ聞かする人はなかりしかど、さにやとほのく ゛ 心得る事のすぢなめりとおぼすも、げにいかにおぼつかなくあやしく心得がたくおぼすらんと、御心の中苦しう推し量らるれど、たが御ためもいとめづらかにあやしかるべき事を、きと聞え出んもうしろやすからぬ事なりかしとおぼしかためて、の給ひ出でずなりぬるを、いと口惜しう恨めしとおぼして、よろづに聞えかこち給へど、「たゞあるやうあらんとおぼせかし。聞きあきらめ給へりとても、絶えはて給なん野中の清水は汲みあらため給はん事有がたからん物ゆへ、御心の中の苦しさもいとゞまさり、人の御名の世にもらんもいとよしなし」とて、言ひ出ぬほどの心やましさぞ、せん方なき。中く、行方なく思はんよりは、知りながらの給はぬよと思ふ心やましさぞ、言はん方

すると微笑むながら「隔てて申しあげていません。あなたさまが隔てておいでだかrおっしゃらないのでしょ。そうなのにどういえばいいのか?」「隔ててはいえませんが。言葉に出していいにくいのがそうなるのです。私がねだらなくても自然とあっあのことかと思う事をいってください」「私が心に思うことをまして想像しているのことなどどうしていえましょう」といってほほ笑む。たいそう魅力ある風情なので「こういう人でなければどんなにがっかりしたか。」少し救われた気もしている。
二人の入れ違いや女君の事は姫君にあれこれとお話はされる方がいかなったのではっきりとは知らないが、当時の様子や結果からひょっとしてあのことかしらと思いあたる事はあるのでますます話せない。
「訳があるのだ。と思いなさいませ。聞いて事情がわかってももはや野中の清水は汲みなおせもむなしく世の中に悪い噂を立てば宜しくなのですから」とぴしゃりおっしゃる。
絶対にいわない様子がまたじれったく。知りながらいわないというのがたいそう物足りなさがなんともいえない。

さすがに吉野の妹姫君におべっかつかいながら聞き出そうとするもこの姫君ぼ~~~~とかわいいだけキャラかと思いきやそうでもない。

浮気性でちゃらんぽらんの大納言の重しになりそうな。予感・・・・・。右大将のおもうつぼ。

これで中宮の心配若君が義理の母にいじめられないかとか
吉野の妹姫君によい婿という願いも叶い。
ついでに大納言の見張りの出来る。

出来る男は違うね~~~~作者あっぱれ!!!!

で続きは最終章だよ!!


とりかへばや物語 第五章 

梨壺に入った尚侍当然東宮は事情を知らないから男君が戻ったと思っている。
いままで妊娠して不安だらけの所突然尚侍がいなくなったから余計不安だったと涙ながらに訴える。
でも相手は女君、どうこう答えようがなくて、添い臥して隣にいる。
すると東宮の宣旨という乳母子が尚侍に内々に話があるというので三人でいる。
宣旨はどうも東宮様が妊娠しているらしい、着帯はしたけれど御やけに出来ずにどうしようかと悩んでいると相談している。
尚侍はじっときいてる。どうかえすのか?
すると自分も内々に何か変だときずいていた。でも右大将が失踪やら自分が体調不良になってどうもできなくなりそんな時に夢で右大将が「東宮様が妊娠されたようだ」と出てきた。
体調も良くなったので参内したしだいとさももっともらしい返事をして宣旨も納得し安心した。

これはその相手が右大将だっと思わせるのにうってつけ、しかも自分以外に秘密を共有出来る尚侍がいる。
頼もしい限り。
さてこの話を聞いている東宮が一人????
東宮は尚侍が男君と疑っていない。なのに自分の相手が右大将なんて?????
不審がっている。
ころあいを見て尚侍が内々に東宮の傍に右大将をよこして夜の暗闇に紛れて帳台へ入れる。
東宮はここで二人の入れ替わり、尚侍が男姿になり女君を探しに行っていたと初めて知る。
東宮この話を聞いて唖然~~~~~!!!
更に男君への不審を爆発させて、男君をなじる。
男君はいろいろ説得弁明するも、もはや気持ちはきれている東宮。
がんとして靡かない。
翌朝ずっとはいれないので、嫌みの一つを言って出ていく。

そりゃおこるでしょうよ。
で逆切れ完全男化した男君でした。

東宮はさらに心労と妊娠の辛さで帳台で籠る。
内裏では東宮が病気だ。と大騒ぎしている。


そんな中、帝が東宮の病気の事も気になるけど以前から思っている内侍の様子が知りたくて東宮の所に内緒で行ってみようと昼頃に梨壺へこっそり東宮の寝所へ忍び込む。

御丁の後にやをら立ち隠れて御覧ずれば、宮の御前は、白き御衣のあつごへたるを御髪ごめにひきかづきてぞ大殿籠りたる。督の君は少しひきさがりて、薄色ども八つばかり、上織物なめり、少しおぼえたる袷の衣、袖口長やかに引き出でて、口覆ひして添ひ臥し給へる、いみじううつくしの人やとふと見えて、愛行はあたりにも散りて、たゞ大将の御顔二つにうつしたるやうなれど、かれは、ねびもてゆくまゝに、けだかくなまめかしくよしぬけるさまぞ、似る物なく成まさり給める。これは、たゞすゞろに見るに笑ましく、いみじからん物思ひ忘れぬべきさまぞいと限りなかりける年比も、名高きかたちゆかしくおぼしわたりつれど、いまだかばかりひまもなかりつるを、今まで御覧ぜざりつるさへくやしう、おぼしのどむべき心地もせさせ給はず。今しもかたかるべき事ならねど、かばかり飽かぬ事なかりける人を、大臣の、宮仕への方思ひはなちたる、いたづらなる不用の人とかけ離れけんとおぼしめせば、今もさやうの御けしきども聞きてひきや籠めんと、あやうく静心なく、我ながらおもほしのどむべくもあらぬ御心焦られも、さるべきにやとまでおぼさるゝを、御心をしづめてなを御覧ずれば、白き薄様ににをし包みたる文の、いまだむすぼほれながら宮の御かたはらにあるを、少しをよびて取り給手つき、うちかたぶきたるにこぼれかゝれる髪のつや、さがりば、目もあやなるほどよりは、裾の上にうちやられたるほどはいと長くはあらぬにやと推し量られて、丈ばかりにやあらんと見ゆれど、くせとおぼゆるほどの短さにはあらず、袿の裾に八尺あまりたらん髪よりもうつくしげにぞ見ゆる。少しうち嘆きて、「あなおぼつかなや。今朝も、御返りだになくて、いぶせげにの給へる物を」とてひき隠しつるを、誰がしなどおぼめくべきにはあらず、大将の宮に聞こゆること有べしとぞ、心得させ給ふべき。いつとなく立たせ給へる

これがいわゆる垣間見
平安時代は高貴な姫君はやいそれと外には出ない。
なので垣根から簾を揚げて外を見る女をそっと見るか、家の者に中に入れてもらうかしないとおいそれと見れない。
帝は当然東宮の尚侍をなんの支障もなく会えるはずだけど・・・・・・さすが物語延々伸ばしまくり~~~

尚侍は東宮の後ろに下がって薄色のネ圭八枚の羽織って上着は織物のよう。
長い内着の袖を長く仕立ててそれで口元を隠している。
大変かわいらしい人だ。何故こんな素晴らしい人を入内させないのか?
また入内入内と騒げば「今も籠るという」とまた左大臣邸へひきこもるのではときがきでない。
そうしてると尚侍は及び腰になりながら帳台に結んでいる文を手にとり、「まあまだ見てもおられない。あちらに面白くない」と言っているのにと文を袖に隠す。
その姿も髪は短いが美人だという長い髪より見劣りしない。
すると中納言の君(帝の宣旨の妹)が帝がこられたどちらにいるのかと簾をすべて降ろしてします。
邪魔が入る。
しかたなく帝はいまきたような様子で東宮の元へ来て座った。

侍の督の殿は、これにさぶらひ給か」とおほせらるゝに、聞えさせん方なくて少しうちみじろぎ給けはひなれば、「例ならぬ御こと、いつとなくものし給らんは、いかにおはします事にか。院にはかくと聞こしめしつるにや。御祈りなどはなきか」と
おほせらるゝに、続け出でて聞えさすべき言の葉もおぼえねど、おぼつかなくてやむべき事ならねば、「そこはかとなくて月比になせ給ぬるに、此ごろ又心よからぬやうなる御けしきのおりく交り侍は、御物の怪にや侍らん」とばかり、はかなげに言ひまぎらはし給へるけはひもたゞ大将なるを、あさましきまで聞かせ給て、幾千代聞くとも飽く世あるまじう聞かまほしければ、御返り聞こえぬべき事をの給はせつゝいつとなくおはしませど、あまり答へ聞えさせんも今ははしたなき心地すれば、たゞおりくうちみじろぎ給ばかりなるを、いとおぼつかなくおぼせど、そゞろにおはしまさんもあやしければ、「例ならぬ御事、いつとなからんは、いとたいく ゛ しき事になん。なを御祈りなどの有べきにこそ」とて出させ給にも、ありつる面影身を離れぬ心地せさせ給。春宮の御なからひは、さまで親しかるべきならねど、院の上の御事をろかならず思ひ聞えさせ給へば、その御心寄せことにこまやかにおもほしをきてたる

帝は垣間見た尚侍の声を聞きたいので「尚侍殿はいるのか」とじゃべりかける。
女君はいつもそばでいた帝だからかんずきはしないかとたじろぎながら、それでも声を出さないわけにはいけないので、「なんとなしに数か月の間に悪くなられて。今も不快になられたとい」うご様子で。物の怪の仕業でしょうか?」小さくとぎれとぎれに話す。その様子も素敵なのでこたえなければいけないような事をあれこれ聞かれる。
尚侍はすべて答えるのもはしたないし男姿だったと知れるのも恐ろしいので、言ったり返事しなかったりしている。
さすがに話をせずにそのままここにいるのもおかしいので、祈祷なさいと一言言って去る。

東宮の出産が12月か。さしあたり神事がないので梨壺で密かに出産しようと計画している。
そんな頃、帝はやはり尚侍の様子が気になりしかたない。
右大将が参内して話をしているついでにというふうに尚侍の事を聞く。

上は、有し面影のみ身を離れぬ心地せさせ給て、見ではえやむまじうおぼさるれば、大将の参り給へるを、例の近く召し寄せて、こまやかなる御物語のついでに、例の尽きせぬ督の君の御事おほせらるてみる。

帝は垣間見た尚侍の面影ひとしきり会いたくて
左大臣にはその都度行言ってきたが、いつも遠慮してよい返事をもらえないと、右大将から攻める作戦にでる。
右大将は女君がもうよいお年になったので、さすがに恥ずかしがり屋ではないでしょうから父に帝に上がる件は話してみますと返事する。

あざやかに清らにめでたきかたち有様を御覧ずるに、まづたがふ所なかりし人の面影はふと思ひ出られて、御涙もこぼれぬべき
を、せめてまぎらはせ給ひて
尚侍件で右大将にお召しになるが、その姿が大変似ているので垣間見た尚侍の面影を思い涙がでそうになるけれどぐっとこらえて
帝はさすがにこれまで言いすぎている件だから、左大臣にまたと思われるのがいや。

しゐては、言ひにくき事のさまなるを、たゞ忍びて宣耀殿に導かれなんや」と語らはせ給へど


内々に右大将に尚侍に寝所へ手引きしてほしいなと相談。

右大将としては大臣の娘だし、そんな愛人的な扱いは不満、ここは返事せずに入内させるように父に進言しようとなにも言わずに退出する。

父に相談すると、今更いままで頑なに断っていたし、女君がああいう男姿でいたから決まるが悪い。ただ同じ内裏でいらっしゃるのだから自然の流れで男女の関係になるのがいい。そうしてから女御なり中宮になるのはよい。
でないと皆がどんな風に言うかと気にしている。

右大将は女君の過去を知っているのでそれ以上言わない。ただ正式に入内出来ないのが残念だと思っておられる。

かねてから東宮は産み月で苦しまれる事がなく大変右大将に似た可愛らしい男君を出産された。
中納言の君がすぐに連れて右大臣家へ預ける。
右大将は左大臣の妻に東宮さまと自分の縁をお話になり、父も共に驚き大変もったいないとお考えで、忍んで通った方に出来た子として世間に言い乳母も大変優れた方を選ばれた。

一方東宮は産後の肥立ちが悪くて時折り失神することがあり、父院に会ってから出家したいとおっしゃる。
今はこの時と宣旨と尚侍もご準備されている。

東宮様本当に・・・・・・・・可哀そうってかこれも作者のいとか????

話戻し
すると帝、左大臣が参内した際にふと

春宮の御悩みをこたらでまかでさせ給なるは、内侍の督もろともにや」との給はすれば、「しか、さこそ侍らんずらめ。「参り給しより、かた時も離れがたくなんおぼしめされて」とぞうけ給はる」と奏し給へば、
「そもさるべき事なれど、かしこにては、院の上などつと添ひおはしまさんに、便なきやうにあらん。御年はねびさせ給へれど、つきせず今めき給へるものを。さやうにて御覧ぜんは、そこにはげにあしからずおぼすべきことなれど、思ひ捨て給はんなん、ことはり知らず恨めしかるべき。世の常の女御・宮す所も物し給はず、おほぞうの宮仕へざまなめれば、宮出で給とも、なをさてこそはさぶらひ給はめ。ひき具しまかで給なば、内裏わたりもこよなくさうく ゛ しかるべし。若者どもも、その御方く ゛をこそ、心にくゝおくゆかしきあたりには思ひてつどふめれ」とおほせらるれば、

えっとこれはつまり帝が東宮が院御所においでになるのなら尚侍もお供するのか?と聞いている。
左大臣は東宮様は尚侍をかたときもお放しにならないので一緒に出掛けるでしょうと言っている。

すると帝が「それはそうだろうけれど、あちらには院がお出でて院もお年とはいえまだまだお若い。尚侍がおいでで(お手がついたら)あなたはいいだろうが私はとても恨めしく思います。ここにはちゃんとした女御や御息所(宮を生んだ人達)もいない。
もし院が尚侍をはべる事があっても尚侍のまま。東宮が院御所にいかれても尚侍は内裏におられるのがいい。殿上人がそちらの奥ゆかしい女房達も素敵だと評判なのに・・・・」

→早い話が私が忍んでいけるように尚侍はここにとどめておいてほしい。と言っている。

あ!!!きた!!と思っている左大臣はよっしゃのる!!!


「げに、かならず添ひ奉りてまかでぬべきにも侍らず。院の上の、添ひ聞えさせ給はぬがうしろめたくおぼしめさるゝ、御代はりの御後見にとぞの給はせし事なれば、かしこにてさへ添ひさぶらはるべきゆへも侍らねば、里へこそはまかでぬべきを、まことにおほやけざまの宮仕へもつとめさぶらふべき人なれば、ついたちのほどはまかででも侍なん」と聞えさせ給へば、

絶対一緒にいないとというわけではないから東宮さまには院が付き添われるので、院がいなくなられるのでご後見にということでした。まあ普通は里に帰るのでしょうが、お勤めを出来ない方ではないんのでそのまま内裏で控させましょう。

お父ちゃんのっかった!!!
元々は女君を女御か東宮女御として出したかったんだから。そりゃそだろ。

いみじううれしとおぼされて、「いとよかなり。昔よりおぼし捨てられし方の事は、今はかけじ。たゞ女宮などだにいまだなかめるが、いとさうく ゛しき、代はりに思ひ聞えんとなん思を、同じ心ならずやと思ふこそかひなく」とおほせらるゝものから、御涙の浮きぬるを、なをざ侍りしも、かつく ゛ 年比の本意かなふ心地し侍りて、限りなくよろこび思ひ給へながら、あさましき不用の人と思給へ捨て侍りて、御けしきにもしたがひ侍らず。今とても、さる方におぼしめし捨てさせ給はざらんなん、かたじけなくうれしう侍るべき」とて、涙をさへこぼしてよろこび奉り給ものから
、なをもて出でて奉らんなどは思給はぬもあやしく、ほのかに見しにも、いとさいばかりの物づつみにはあらざりしを、人のかしづきむすめなどの、あはれにすぎてもて出ではなやかならんはうたてこそ有べけれと、なをあやしくぞおぼさるべき。

左大臣のお考えにうれしく思った帝は「昔ぜひ入内と願った事もかなわなかったことなんかは今は思っていない。私には女宮さえ生まれてないからそのかわりに愛してあげたいと思っていrだけです。前みたいに興味本位で言っていると思っているのが不本意だ」

お~~~いざっくりそんなわけないでしょ。

するといい加減な気持ちではないのだと涙して、「以前はそのことで恐れ多くもお答えできませんでしたのに。見捨てる事なくお言葉がいただけたのでうれしい」と涙している。
そんな姿で女御として正式に入内させないのはどういうことかなと不思議でならない。

これ一見いや間違いなくうちの娘夜這いシテいいよ。と言っている。

この時代は基本結婚は夜這い。

いい家の姫君ならその両親にOKを先に貰うのが当然。たまに強奪はありだけどその後はほぼ悲惨
だいたいまったく関係のない邸宅にそもそも夜這い出来ない。
手引きの者がいる。両親・兄妹姉弟・縁者・女房や家来など。

身分が高ければ高いほど結婚は家にとって最重要課題。誰でも婿にというわけにはいかないのだ。

ここで疑問帝なんだからなんでもありでしょう?
いやいや相手は左大臣です。
変に機嫌をそこねて公務に支障が出ては天皇の位も危うくなります。

なので尚侍の寝所へ夜這いしていいかな?いいよと合意したわけです。

ここで一旦話は帝と尚侍から離れる。

まことや、宮の中納言は、身に添ふ影にて、いかならんひまもがなと、もの言ひかゝらんと、

中納言は右大将の隙をねらい話しかけようとてぐすねひいているがなかなかその時がこない。

そして四の君の元へのそれどことではないし、手引きする者もいないからまったく動かない。四の君もそういう気がなくなったが、中納言がまったく音沙汰なしなのでおっとりかまえてるのね?と不審がっている。
一方の右大将は新しく御殿を造営中でここに縁の女たちを呼ぼうと、それぞれの女たちをあれこれ評価している。

さまく ゛ おぼしあはするに、御心の中ぞ恥づかしかりける。
そんな自分を冷静に世間の男の様に好色な自分に恥ずかしいという感じもしている。

そして再び帝と尚侍の話

正月のあわただしさも終わり、内裏も落ち着いた頃、帝ついに夜這い実行

箏の琴ほのかに聞こゆ。うれしくて、しばし立ちとまりて聞かせ給へば、うぐひすのさへづりといふ調べを、二返りばかり弾きてやみぬなり。琴の音も、たゞ大将のにたがふ所なきを、あはれなりける妹背の中かなとおぼしめさる

箏の琴聞こえてくると鶯のさえずりという曲を2節弾いてやめてしまうがその音も右大将にそっくり。
そりゃそだろ本人だから。

扉が風に開いてそのまま宣耀殿の中へ。

督の君は、丁の内に、琴を枕にて寄り臥して、手まさぐりにそこはかとなくかき鳴らして、火をつくく ゛ とうちながめて物をいとあはれと思ひたる、似る物なくめでたきを、同じ内裏ながら今までよそ人に思ひて過にけるも、有がたくおぼし知られて、人見とがむとも今宵過ぐべき心地もせねば、心もとなく、前なる人もはや寝なんとおぼしめさる。


尚侍は琴を枕にして弦をかきならしている。
帝は女房が寝静まるので待つ。早く寝たらいいのに。と思ってる。

督の君は、さまく ゛ 過にし方恋しくおぼし続けられ、若君の、今はとひきあかれしほどの心の中、何心なくうち笑みて見あはせたりしをなどおぼし出られて物をのみ、いみじう恋しうかなしきまゝに、

ひとかたならず思ふにもうきはこの世のちぎり也けり

女君は置いてきた若君の事をしんみり目と目を合わせて笑っていたのを思い出して恋しいわ思っています。

とて、ほろくと涙のこぼるれば、はしたなくてひきかづきて臥し給ひぬ。碁打ちつる人も打ち果てて、「御殿籠りぬめり」

ぽろぽろと涙が出てくるので、横になる。

女房達も碁も打ち終わり
「さあおねになるわ」と扉を閉めるも「おかしいわ人の気配がするなんて」と言って皆寝てしまう。

尚侍の御帳台には誰もいないのです~~~と帝帳台に入る。

衣を引きやりて添ひ臥し給に、いまだとけても寝給はざりければ、あさましと驚かれて、異人とはおぼし寄らず、中納言のうかゞひて尋ね来にけるとおぼすに、ねたく腹立たしくて、御衣をひきかづきて動きもし給はぬを、しゐて引やりつゝ、年ごろ思ひし心の中、大臣のあながちに辞びし恨めしさ、春宮の御悩みの折ほのかに見そめてし事など、泣くく言ひ続けさせ給に、あさましうなりて、あらぬ人なりけり、中納言と思ひしはひとすぢに心憂くねたかりしを、これは、わが身の憂さも御覧じあらはされなば、いかなる事ぞとおぼしとがめられ奉り、あはくしかりける身の有様を御覧じあらはしては、あなづらはしき方さへ添へて、行く手におぼしめし捨てられなん事も心憂く恥づかしうて、

帝は尚侍の羽織っていた覆っていた衣を引きのけて、添い寝しようとなさる。女君はまだねいっていないので、「何??」と驚いて違うのだとも思わずにひょっとして中納言か!伺いやってきたのだと妬ましくて腹立たしくて衣をひっかぶってぴたりとも動かない。

すると長い間想っていた心の中や。闇夜に左大臣に入内を断られた件とか、東宮の見舞いにいったさいに見初めたとか泣きながらおっしゃるのは帝なのだと気つかれた。
中納言と思っていたのに、もし私の過去(中納言との逢瀬や子供を産んだ事)が知られたらどうしよう帝に自分の過ちが申し訳ない
ましてや男姿の事を知られたらあきれていずれ捨てられるのではないか?


なをこの世にいかでたち交らず跡絶えなんと深く思し身を、大将の、春宮の御事を憂へつ
ゝ、さやうのしるべにもおぼしたりしを、ことはりに心苦しう思ひなりて、かくまでたち出にけんも悔しうかなしう、などて宮の出で給しにもろともに出でずなりけん、殿もついたちのほどはさてさぶらふべく、女房などもさうく ゛ しかるべき事に思ひたりしを、何かは、臨時の祭まではさても、それ過ぎてこそは殿へもまかでめ、など思ひける心もあさましう思ひ続けられて、とりもあへず涙のこぼれぬるを、
出家しようと思っていたのに右大将が東宮の思いをしり力になりたいと内裏に入ったことも東宮に院御所へ一緒に行かなかったことを大変後悔して涙にくれている。


あが君、かくなおぼしそ。さるべきにこそあらめ。たゞ同じ心にだにあひおぼさば、よも御ためかたはなる事あらじ」と泣くく聞えさせ給さま、まねびやるべき方なし。男の御さまにてびゞしくもてすくよけたりしだに、中納言に取り籠められてはえのがれやり給はざりしを、まして世の常の女び情なくは見え奉らじとおぼすには、いかでかは負けじの御心さへ添ひて、いとゞのがるべうもあらず。乱れさせ給ふに、せん方なく恥づかしうわりなくて、声もたてつばかりおぼいたるさまなれど、人目をあながちにはゞかるべきにもあらず、聞きとがめて寄り来る人ありともいかゞはせん、驚かぬ御けしきなるに、せん方なし。

「あぁあなた。そんなにお泣きにならないでください。ただ私の同じだけあなたも愛してくれればいいかげんな扱いはしません」とおっしゃるのがとても言葉に出来ない。
男姿であった時でさえ中納言に無理やり手籠めにされたのに女姿でましてや帝であるから「無理に拒否るの非情さもみせたくない。」とも思われる。それに帝は抵抗できないくらい激しく扱われるので抵抗できない。恥ずかしさのあまりに声もになりそうだけど、だれかを呼んでも帝は今更とがめられない。

よそに御覧じつるよりも近まさりはこよなくおぼされて、今より後、昼のほどの隔てもいぶせく、かた時たち離れさせ給ふべくもおぼえ給はぬるに、いなや、いかなりける事ぞと、なま心劣りもしぬべき事ぞ交りたるや。大臣の、あながちにもて離れ、あらぬさまにもてなししも、かくてなりけり、かくとの乱れによりて、さすがにかくとはえうち出づまじきことのさまなれば、かたはなる物恥ぢにことづけたりけりとぞおぼし寄りける。さても、いかでありける事ぞ、誰ばかりにかあらん、此人を一目も見てんに、行く手にもてなしてやみなんと思ふ人はあらざりけんを、大臣など、さるけしきを知りながら許さずなりにけんは、むげにあさはかなる若君達などにやあらんと口惜しけれど、いみじからんとがも何とおぼゆべくもあらず、見る目・有様のたぐひなきに、何の罪も消え失せぬる心地して、泣くく後の世まで契り頼めさせ給に、さすがに、あやしとおぼしめしとがめさせ給にやとおぼゆる御けしきの、色にこそ出だし給はねどとしるきに、せん方なく恥づかしう、汗も涙もひとつに流れ添ふ心地して、人のあやしととがめむもさすがに苦しうおぼさるれば、出で給はんとても、浅からず契り語らはせ給さま、まねびやらん方なし。

行為が終わり、じっと尚侍を眺めると遠くからよりも近くで見る方が大変お美しい、いまからほんの少し離れていても辛抱できないのに・・・・・、。いやどういうわけか一点だけ??失望されることがある。
どういうことか?なるほどあんなに勧めても入内はしなかった理由がわかったきがした。
相手は誰であろうか?左大臣が許さない相手はそんなに身分の高い者でなかったのか?多少は残念だったが駄目だいえる欠点ではない。
尚侍の見た目や様子もすべての罪が消えてしまいそうな気がして来世までと約束し女君に約束させるが。帝のお顔が変だ!と感ずいているのが女君にもわかるのでそうしようもなく恥ずかしく辛く汗も涙もいっぺんに出てしまいそうな女君でした。
さすがに侍女達が「変だ」とお思いにならないように後の逢瀬を約束して和歌を詠む。

  「三瀬川のちの逢ふ瀬は知らねども来ん世をかねて契りつるかな
この世ひとつの契りはなを浅き心地するを、いかゞあらむ」との給はするまゝに、ほろくと続きぬる涙に、いとゞ聞え出でん言の葉もおぼえずいみじうつゝましけれど、「なを一言聞かではえなん出づまじき」とやすらはせ給も、いとわりなければ、
  行末の逢ふ瀬も知らずこの世にてうかりける身の契りと思へば
朝夕聞き馴れさせ給へりし声けはひは、 おぼしめしあやめらるゝことやとつゝましうて、いたくたえく ゛ まぎらはし給へつけはひの、愛行づき聞かまほしきことぞ限りなき。かた時たち離れさせ給ふべき心地もせねど、御身をわかちとむる心地して、返々契りをきて、よべの妻戸より出させ給。


三瀬川のちの逢ふ瀬は(平安時代の考えでは女が三瀬川を渡る時に初めての男に背負われて渡ると言われる)わからないけれども来世は一緒だよと詠まれた。

「この世の契りだけではやはり浅はかな気もします。どうでしょう」と和歌を催促される。
ほろほろと流れる涙に答えようもない女君に帝は「やはり一言ください。でないと出れません。」とおっしゃる。

右大将だったしらねはしまいかとドキドキしながら
あの世でも逢瀬はわかりません。もはやこの世でも不幸な身ですからととぎれとぎれに言う。
かえって愛嬌がある気がして離れられない気持ちでもなんとか次の逢瀬を約束させて出ていく。

中将の内侍といふ人ばかり御供なりける、今やくと待ち奉りけるに、明くるまでに成にければ、待ちわびてうつぶし臥したるを、ひき起こして渡らせ給て、やをら夜の御殿に入らせ給ても、有がたかりつる人の手あたり・けはひはつゆも御見を離れず、今も見てしがなと御涙もこぼるれど、御文取り伝ふべき人もなければ、大将をぞ、たゞ今参り給べきよしおほせられて、待ちおはします。さばか至らぬくまなき中納言の心にだに、逢ひての恋も逢はぬ嘆きもみな忘れし人の御さまなれば、まだかばかりなずらふ人だに御覧ぜざりければ、たえがたくおぼさるゝもことはりなり。

中将の内侍だけをお供に連れて帝はまだかとお持ちしていたが待ちくたびれてそのまま寝てしまった。内侍を起こして夜の寝所へ入ってしまいとさきほど分かれたばかりなのにもう恋しいと思っておられる。
文を渡す人もいないので右大将を召して後朝の文を手渡そうとしている。あの浮気の中納言も会っている恋も会わない恋も忘れさせる女君の美しさだからそんなに女を知り尽くした帝ではないから離れているのに耐えられはしない。

大将参り給へるよし聞かせ給て、御前に召したるに、いと清らに恥づかしげにてさぶらひ給に、うち出させ給はん事いみじくかたはらいたけれど、大きやかに結びたる文を御ふところより引き出でさせ給て、たゞ大方なるやうにて、「内侍の督に聞えん事を殿のゆるされありし後、今日よき日なれば奉て、やがて御返り見せ給へ。おほぞふの宮仕へなどにては、大臣の見給はざらんには心得ず思ひなして、返り事ふとあらん事かたかるべければ、わざと物しつる」との給はすれば、給はりて立ち給ぬ。御けしきのあやしければ、もしけしき御覧じたるにやとばかりぞおぼし寄ける。

尚侍そっくりの右大将に文を渡すのは気がひけるけれども。袖の中から大きな文をお出しになり。「左大臣に尚侍にお手紙を出す許可をいただいたので今日は日もよいので、届けてしっかり必ず返歌をもらってきてくださいね」と念押しされる。
???右大将さては垣間見されたのかな???

宣耀殿に参り給へれば、「夜より御心地悩ましとて、まだ御殿籠りて」と、大納言の君といふ人聞ゆれば、驚きて、「など告げ給はざりける。いかやうに、おぼさるゝぞ。御かぜにや」など聞え給も、いとかたはらいたければ起き上がりて、「胸のいたく侍れば、おさへて」との給ふ。御顔もいたく赤みて、泣き給けりと見ゆ。もし上の近づき寄らせ給ひけるにやと、此の御文のけしきもいみじくゆかしければ、近く寄りて、「今朝御前に召し侍つれば、参りて侍つるの、これ人伝ならで奉りて、やがて御返たゞ今御覧すべきよしおほせ侍づる」とて奉り給に、

尚侍の御殿に行くと「昨夜から気分が悪いとまだ寝所におられます」大納言の君がいう右大将は驚いて「なんでおっしゃらないのか?お風邪かな」といいながら寝所へ向かう。

さすがに起き上がって「胸が痛いのでおさえています」お顔を赤くなって泣いておられるのだとわかる。もしかして帝がお近くにいらしたのでは?と思うと近くにより「朝に帝に呼ばれてこの文を届けるように返歌の文をもらうようにおおせでした」と文を見せる。

人も知らでやみなんをこそたけき事におぼすに、この人のかくの給に、けしき心得給らんかしといみじうつゝましうて、面をかん方なくおぼさるれど、若びかゝやかんも我身の有様にはたがひたるべければ、たゞ御顔うち赤めて御文は取り給へど、広げ給はぬを、「かならず御返り有べきさまにこそ給はせつれ。とりわきたる御使ひのかひなく待ちおぼされん、いと面目なかるべし」としゐてそゝのかし給へば、うち笑ひて、「異人の言はんやうにもの給はするかな。さすがに明け暮れ御覧じ馴れにし手も、かしこき御目にはあやしと御覧じとがめらるゝ事もあらんと、つゝましきはさる物にて、大臣なども知り給はで、心さかしらに御返聞えんも。さこそかならずとの給はすとも、御心劣りせぬやうはあらじを。たゞ、たしかに給はりぬるよしを申させ給へかし」との給も、げにさる事なれば、「げに、御返事は、ふと聞え給んに方く ゛ はゞかりあらめ、見給はん事はなでう事かあらん」と、さりげなくてこの御文をゆかしげにおぼしたれば、開けんあやうげにおぼして、御顔いたく赤くなりてまぎらはし給もことはりなれば、参り給ぬ。

人の知らない事であったのがせめてもの救いだったのに、右大将にそうだろうと知られて恥ずかしいが若い女ではない(処女でない)ので文をとるも顔は赤いその文を広げようとはされない。「必ずもらってくるようにおおせでつかいの務めをはたせなかったらどうしょましょ。面目丸つぶれでごさいます」と催促されると、尚侍が少し微笑んで「何にも知らない他人の方がゆうようなことをおっしゃる。よく知る元右大将の筆跡ですから変だととがめられてはと父と相談してからと私が一人で決めても・・・・・。絶対にとおっしゃっても返って失望される。今はただ文を見たとおっしゃってください」とお言いになる。
男君もそれもそうだ。お顔を赤いままだが男君はあきれめて再び帝の元へ帰る。

御前には、もしやと待ちおはしますに、むなしければ、いみじう口惜しくて、今のほどのおぼつかなさも堪えがたけれど、しゐてされげなくもてなさせ給て、「世の常の懸想のさまならん事のやうに。こはかやうに艶なるべきことのさまにもあらぬ物を」との給ものから、いみじういぶせくおぼつかなく、おぼしあまれば、又も給はせて、よべの事、「いとかく残りなく」とまではの給うはず、たゞ、「ほのかに、さにやとばかり見し火影のいみじうめづらしう、まだ見ぬさまなりしも、すゞろに身を離れぬ心地していと恋しくわりなきを、いかゞせましとひたぶるになん思ひなりぬるを、さるは、大臣のあながちに許さぬ事なりしを、しゐて知らず顔にてうちとくるほども、心なくやとつゝまぬにしもあらねど、従はぬ心なん、まだ我ながらかばかりなる心はなかりつるを、さるべきにやとまでなんおぼゆるを、そこにだに同じ心にしるべして、よべばかりの垣間見をだに今宵すぐさず導き給へ」と、の給まゝに御涙もこぼれぬるを、され
ばよ、たゞよその垣間見ばかりにてはかくおぼさるべきやうなし、督の君の御けしきもいとあやしかりつるを、あるやうある御けしきなるべしとおぼすに、限りなくおぼししめられたんめる御けしきも、かつく ゛限りなくうれしく聞かれ給ふ。思ひなく世の常のさまにて参り給て后の位にもゐ給はんに飽かぬ事あるまじき御身を、何となきさまにて御覧ぜられぬるぞ、いみじく口惜しき。「さらば、まづこの御文を伝へ侍て」とてまかで給ても、

帝はもしかして返歌が!!と期待したのにがっかり今も会えなくて耐え難いのをひたすら我慢されて「普通の男女間のようにされるのですね。これはこんな世間のようになされなくてもいいのに」と失望される。
ひどくゆうつでまたお手紙される。
右大将にはかすかに遠目で見た尚侍の様子を恋しくてしかたない大臣が許さないのをわかっているのに、自分でもどうしようもない。私自身こんなに愛情をもってせっしたこともないのにどうしようもない。どうかあなたの事のようにこの間の垣間見くらいに合わせてください。と涙ながらに訴える。
右大将は帝の様子でお二人は男女の関係になられたのだと確信する。「そうなのだでないとただの垣間見ならこんな思いはされないし。尚侍さまの様子もおかしかったもの」「ではこのお手紙を」と席を立たれる。
帝の女君への愛情を大変うれしく思いながらただ后の位にもという身分を平凡な出会いに失望はするが。



隠すべき事ならでば、大臣に、御けしきどものあやしかりつるさま、の給はせつる事など聞え給に、なをさなるべしとおぼすに、かつく ゛うれしく、年比心ゆかずのみおぼしわたる事なれば、限りなくおぼしよろこばるゝ事なれど、たゞ今は知らず顔にて、女房の装束・御装ひをも、常よりもことに清らを尽くして奉らせ給。御丁のかたびら・御調度まで、いよくみがきしつらひ飾り給。年比は、心を尽くしても見はやす人なき御交らひを口惜しうおぼされしに、かゝれば、いとゞうれしかりけり。限りなき御心ざしに添へても、人柄・有様など少しもかたほなるべきならねば、后の位までなし御覧ぜんに飽かぬ事有まじきを、たゞ、いかにぞや、御心にかゝりたること一つぞ、心やましくおぼさるれど、なべてみな人知りたる事にはあらじ、たゞ心知りの人二三人などこそは、さる事ありきかしと思ひ出る人ありとても、わざと女御・宮す所にて参りたるにてもあらず、宮仕へざまにて忍びて御覧じそめんに、心ざしにまかせて后にもゐ給はん、なでう事かあらんとおぼしめして、つゝむべきならねば、ありし後、昼も渡らせ給ふ夜もつとのぼらせ給。かたはらに又人もなきさまにのみもてなさせ給へば、殿・上・大将殿などのおぼしよろこびたるさま、限りなし。


隠すことではないのでこういうふうでしたと父に伝言したところ、たいそう喜ばれて今は知らん顔をしてご本人や女房の装束や照度品にいたるまで素晴らしい品々を贈られて陰ながらお手伝いされる。限りがないご寵愛で自身の人柄や容貌に不足はないけれど、ある一点だけは気になる。しかし宮つかいとして出仕したら愛情次第で后にもなられることが出来る方なのだからとどんな問題かと思われる。あんな事があったと女房の一人や二人はしっていようが公になっていないのだから問題ないと考えて人目を避ける必要もないので昼もお出かけになる。
他に(女御方)がいないように夜もずっとお召しになる。(もちろん帝の夜のお勤め・ベットイン)右大将左大臣奥方も大変お喜びになって限りがない


さてここで平安時代の結婚基本パターン

まずは情報収集
始めは男がどこの誰がどのくらい良い女だと情報を収集する。
↓そのネタものは邸の使用人や女房など肉食系女子0の平安時代セールスは周りの人の口コミオンリー
そして男から和歌を贈る。

女はそれが誰からでその和歌で人柄と身分を知りここで振るいにかけられる。
勿論その選別は両親兄妹兄弟乳母など

女側は①なかったことにする。和歌を送らない。無視する。
     ②代筆をする。
     ③和歌は送るがやんわりと断り、相手の出方を待つ
まずはこれを繰り返す。

で男が夜忍んで初めて邸に入る。勿論手引きする者が必要

忍んで来たら女に近寄りいろいろどんなに女を愛しているかうったえてそのまま押し倒す。
で明け方前に屋敷を去る。
朝に相手に後朝の文という和歌を送る。
これを三回繰り返し三日目の夜に床披露という今の披露宴のような会が開催。
ここで三日目餅をかいきらず二人で食べ合い。晴れて夫婦に。

尚夜這いは女に知らされない場合もあり、玉鬘・女三宮ケースがいわゆる不意打ちケース
垣間見がいきなりというケースも

但帝は例外正式な妃は入内といって内裏へ入る儀式を行ってはいるので当然そういう行為を覚悟の上入ります。


寝所に入りあれこれ女の情けを得ようと恋心をうったえ最後は無理にでもしてしまう。
平安時代に強姦罪はない。仏教の教えで「女は不浄の者」とされ煩悩のすべてという解釈らしい。
存在が男を惑わすという解釈なので強姦されても私が女だからよとなるらしい。
そういえば平安文学もほぼ強姦なのにその後女は男に愛情をかけるパターンが多い。
まず今の世の中なら99.5%は犯罪な結婚事情

とりかへばや物語 第四章 

二人揃って父の左大臣邸へ。

暗き程にまぎれて京におはし着きて、此女君をば督の君のおはしまししやうにその御方の御丁の前に入れ奉りて、男君は御前にさぶらひ給て、殿見奉り給に、とりかへばやの御嘆きばかりこそ変はる事なりけれ、うれしきにも、涙にくれてえ見奉り給はず。いみじくうつくしげになつかしうはなやかなる女の、髪はつやくゆらくとかゝりていといみじくめでたく、なよゝかなるさまにて居給へるも夢のやうに、えもいはず清らなる男にてありつき、びゞしくてさぶらひ給もうつゝともおぼえず、又いかゞなり変はり給はんと、あやうく静心なきぞことはりなるや。月ごろの事どもなど聞え給て、「もとよりかゝるべかりし御さまどもの、いとめずらかなりし。をのく御心たがひなく、此まゝにてものし給ふべきなり。かたち・さまの異人ならましかば、あしくも有べかりけるかな。いさゝかたがふ所のなきこぞ、あさましく、さるべかりける事かなとおぼゆれ。今ははやう大将にて交らはれよ見るに、つゆたがふ所なし。
少くあはらぬ人と見ゆともいかゞはせん。論じあらがふ人あらじ。右の大臣のむすめ、権中納言わざと添い居てあつかひ窓ひけるが、大臣も勘事許して、我殿に迎へられにけり。げにうちくこそさま異なる事どもも思へ、人聞きびんなしや。たがためにも

夜の暗いうちに邸宅に入り、もともと尚侍の帳台へお連れして男君が傍に座っているところに左大臣が入ってくる。
女君をご覧になると「とりかえたい」と思っていただけで見るとかわりなく、大変うれしく涙で女君が見えない。
女君は大変愛らしく美しく親しみやすく華やかな人で髪を大変ゆらゆらと肩にかかって美しく優美でなよなよして夢のよう。
男君はえもゆわれる清らかな男で格好がよくそのにおられるのも現実の事とは思えない。
「どういえかわったというのか?」思うのもしかなたい。
「もともとはこうあるべきであった。二人の気持ちが変わらないうちに入れ替わりなさい。少しも違いがない。右大将として出仕なさい。誰が違おう。理屈をいって事をあわげる人がいない。さて右大臣家の四の君は中納言が世話をしていたが勘当をといて今は右大臣がお世話している。もう二人の運命も内内の事ですませられるよ。しかし世間の噂が気になるがね。」
とここは右大臣家への配慮をしなさいと右大将に言葉をこめている。

そんな中尚侍あてに東宮の梨壺から伝言がきた。具合はいかがか?東宮様には体調が思わしくなくいつ頃出仕なさるのか。内々にお話があるとのことだった。

かの右の大臣の御わたりの、思はずなりし事のまぎれをうむじて、吉野の宮には隠れ給へりけると言ひなして、内裏にも
とく参り給へ」といそがし給にも
左大臣は「四の君と中納言の浮気に耐えられず吉野の宮に隠棲していたのですとでもして。のさぁ右大将として出仕なさい」と男君に催促。

いかにうゐくしからんと我心もいとまばゆく、

さすがに大丈夫かな??と

世の人の物言ひも、いかなるにつけてもつきく ゛しきなれば、「大将は、権中納言の事に嘆きわび、吉野の宮には隠れ給ひて世の背きなんとおぼしけるに、此親王の御むすめ見つき聞え給ひて、世をえ背きはて給はぬ物から、猶都に立かへらん事は、このことの心やましさにおぼし絶えたりける

すると世間では「右大将さまは四の君と中納言の浮気に嘆いて吉野の宮に隠棲していたけど、その娘姉君がお世話して、とても出家せずにいたが帰京は諦めていた所。ご両親様がぜひもう一度姿を見たいと懇願されて帰京されたそうだ」と解釈して噂して喜んだ。

帝も聞こしめして、まづさまを変へず今まで世に物し給ける事を、限りなくおぼほしよろこびて、召しあれば参り給ふ

めづらしがり見奉る。御前に参り給へれば、とばかり御覧ずれば、久しかりつる月比のほどにいとゞこよなくなりまさりにける心地して、かほりあてなる所さへ添いにけり。あはれ、かゝる人のやがてさまを変へてましよ、いみじき世の憂へにこそあらめと、打まもらせ給て、涙をさへ落させ給ひけり。

帝も殿上人も全然入れ替わった事に気がついていません。
きょろきょろしていても久しぶりにきた宮中に思いにふけっておられるのだといい方向へ。
やはり吉野遠い地で修業をされていたのでりりしさまで備わったとすごく高評価です。

東宮の元にいくも御簾を隔てた向こうと男君こちらすごく隔たりを感じています。
帰宅して尚侍と宮中のお話
そしていよいよ四の君攻略へ、

男君和歌を贈る

目ならべば忘れやしにしたれゆへに背きもはてず出し山路ぞ

右大臣、右大将が帰京したのでお越しがあるかもと四の君を諭す。

すると和歌が!つかさず右大臣しっかり詠むのだよと念押し、四の君恥ずかしくしかたないけど再び勘当される恐怖で反論できない。

今はとて思ひ捨てつと見えしより有にもあらず消えつゝぞ経る

あてにおかしげなるを、残りゆかしく心とまりて、督の君に見せ奉り給へば、かたち有様はいとおかしげにこそありしかど、手もそゞろに見馴れたりしほどあはれに思ひ出られて、忍びの森のゆかりを、方く ゛ 心に離れぬ契りと思ひ乱れ給。


あぁそう大変上品で優美な筆跡はそのままと女君の懐かしく思って二人にも縁のある女だと思いが増す。
さて男君も東宮さまや吉野の姫君の事を考えているうちに時が過ぎて、右大臣家ではそのうち我が家へ右大将がお越しになるかもとあれこれ準備している。当の四の君は気が気でなく、だからといって自分が何が出来るのだと葛藤しているうちにもし右大将がこられたらみじめな姿を見られると思いだけで涙にくれる。
そんなだいぶ遅く夜になってから右大将が右大臣家を訪問する。

優美な姿はそのままでしりごみする四の君を右大臣がカツ!!!
ようやく膝行して右大将の元へ。

右大将はあれやこれやいままでの事を言い訳している。

世をうしと背くにはあらで吉野山松のすゑ吹くほどとこそ聞け

私との仲を辛いと世の中を出たのではなく 通われた方がいたからと聞いていますが。

げにかくぞ答へんかしと、いとにくからずほゝ笑まれて、

まったく答え方がうまい人なだ。と憎からず微笑まれながら


その末をまつもことはり松山に今はととけて波はよせずや

吉野山に吹かれる松があったとしても。あなたは待つしかないのですよ。
私以外の男を受け入れたのだから。


身のことはりを思ひ知りつゝも、なを恨めしかりし御心ばへを、背きぬべくやと、心みに吉野の峰の奥深くは尋ね入て侍しかど、おぼつかなきも忍びがたく、幼き人のあはれなど、わりなきほだしに人わろく思ひ返され侍にしもいと罪深きも、君は心やすげにうけ給りしこそ」など、こまやかにいとしたり顔に続け出で給へる、異人とは思ひ寄るべきにもあらず。答へん方なきまゝに

わが身のゆうつで身の置き場がなかったですよ。と柔らかにおっしゃる男の気配に「まあつまらない事を言って仕舞ったのか」と後悔して汗を流すくらい気にしている女のすべての罪が許されそうな様子だ。

たゞいみじくなつかしくあはれにうち語らひて過ししならひ、今しも変はるべきことならねば、さこそはとおぼすに、あさましき御心変はりを、今はじめたらんよりも恥づかしくいみじけれど、おびえ騒ぐべきほどならねば、嘆き乱れたるけはひしるきを、げにあやしからんとあはれにおぼす

この後二人は帳台へ、四の君はいつものようい夜話しのつもりだったが、男君が急に襲ってくる。中納言との初めての情交よりも恥ずかしいがおびえて騒ぐことではない。しかし変だと思っている。男君は乱れるままに「実際変だと思っているだろうな」と思っている。
いざ関係してみると中納言の事も吉野の姫君の事も気になるが浅からぬ方だと感じになるものの夜にしか通われない。
さすがに女も不可解ででもお顔は以前の方と違わぬ。しかし・・・・・・。

 見しまゝの有しそれともおぼえぬはわが身やあらぬ人やかはれる

 ひとつにもあらぬ心の乱れてやありしそれにもあらずとは思ふ
和歌の筆跡も似せてあるからますます????

一方中納言は宇治で若君を見ては涙する。
そのうち右大将が帰京した噂を聞きつけ、男姿に替わられたのだと呆れられ、若君と乳母を連れて式部卿邸へ戻る。
宮中で会議のある日は必ず出仕されるであろうと。その日に参内するとやはり参内しているが、声をかける雰囲気をまったくみせずにいる。

若君を、さる人ありきかしと、いかゞなりにけんと思ふべくやあらんと思ふに、恨めしくかなしく、人わろく涙にくれて出で給ぬ
すると完全に私を見限ったのだ~~~~がああ嗚呼人目のあるのに涙している。

夜もすがら思ひ明かして、なを忍ぶべき心地もせねば、
  見ても又袖の涙ぞせきやらぬ身を宇治川にしづみはてなで
さまく ゛書きやる方なく恨み尽くし給へるを、大将は見給て、有しそれとこそ見けれと、おかしくもいとおしくもおぼゆれば、督の君に見せ奉り給。常に、あらましごとにてだに、ひたおもてにあらまほしげにて過ぎにし方を恋ふると言ひあはめし物を、げにいかにあさましく思ふらんと、さすがに胸うち騒ぎてあはれなるに、大将は、我にはあらずとあらがひ給ふべきにもあらず、この人の世づかぬものぞかしと思ふらん心の中ひとつは、いとおしく恥づかしかるべけれど、我身を世になくきよめんとても、督の君の御事をあはつけきやうに人に見せ聞かせじと思へば、「たゞさ思はせて。御返りは、心とき人にて、見あやむるやうもぞ侍る。これ聞こえ給へ」と、せちに督の君にそゝのかし聞え

一晩中嘆き悲しんでもあきないので和歌を贈る。
お会いしたいのにわたしの袖の涙はせきかねるほどです。捨てられた身をつらいといって宇治川へ身を投げることも出来ない。
安易に若君の存在をほのめかしている。
右大将は「女君におもったな」と可笑しくてもあり気の毒もあったのでこの手紙を女君に見せる。
「昔の男姿をあざけっていたのに。どうしてとあさましく思っているか」ゆうつ
右大将はまぁ思わしトコ、尚侍様を世間の目にさらすわけにいかないから。
「まあ私がまだ女君とおもわしときなさい。 さあ見破られると困るから女君に和歌を返しなさい。」と

心から浮かべる舟をうらみつゝ身を宇治川に日をも経しかな

私の心からとはいえ、あなたの浮気心を恨んで宇治川の傍で日を過ごしていました。と書いた。
手紙を受けるとめったにない素晴らしい筆跡だと感激しながらももっともなことだと自分の傲慢さを反省して

いとゞしきなげきぞまさることはりを思ふにつきぬ宇治の川舟

完全にストーカーの中納言~~~~それは違うと・・・・・どんどんこの人おかしくなります。。。。。

さてそうこうしていると東宮の事も気になるので尚侍は内裏へ向かいます。


とりかへばや物語 第三章 

さて、権中納言と右大将が都を去り、宇治へ向かうまで紹介しましたがその後。

つとめて、格子ども上げわたしたるに、うち見出でたるも、うつゝの事とはおぼえぬを、中納言は思ひかなひぬる心地してうれしきまゝに、あたま洗はせなどして、髪もかき垂れなどして見れば、尼のほどにふさくとかゝりたり。眉抜きかねつけなど女びさせたれば、かくてはいとゞにほひまさりけるをやと見えていみじくうつくしげなるを、かひありうれしと思ひ惑ひたれど、我心は、いかにしつる身ぞとのみおぼえて、世中の事もいぶせくほれく ゛として物のみかなしければ、起きも上がらぬ


その日はそのまま宇治の別邸にはいり、夜を明かし

朝になり窓を開ける。女君は外に目を向けても現実の事という実感がない。
中納言は思いが叶って喜んで女君の髷をほどいて頭を洗わせると尼君くらいの長さでフサフサ。
眉毛を抜いて墨で上にさらに眉毛を描いてお歯黒をすると美しい姿に
中納言は「よかった。うれしい」と喜んでいる。
女君はなれない女姿で困惑している。「どんな姿になったのか」と嘆いて悲しい。
中納言との情交も鬱陶しくて煩わしくて、ひたすら悲しいから起き上がりもしない。
そんな姿に中納言は「いじらしい」と思っている。

「これこそは世の常の事なれ。年ごろの御有様は、うつしごととやおぼしつる。もとよりひたおもてにさし出でて、あまねく人に見え交らはんの御このみに、ことさら交らひ給しにこそありけれ。めでたくとも、我身をあらぬに変へて過ぐし給へる事、有べきことならずあやしくとも、かくておはせんこそ、例の事なれ。殿にも聞かれ給はん、さらにあしと、世に思ひ聞え給はじ」

中納言が女君にこの姿こそ、正常で他人に会って交際しようと無理をしていたのでしょう。
それがりっぱな姿だったとしてもよくない。父上だって悪い事だと思われませんよ」と女君を諭す。

さすがに納得しかりのような女君

吉野の宮の取らせ給へりし薬の中に、夜に三寸髪かならず生うとありしを、かゝらんものぞとおぼして持ち給へるして、日ゝに洗ひて
この薬をつくるに、人にも見せで、さばかり好ましうなまめける身を、おりたちて中納言のあつかひ給にうちまかせて、我もほれぼれしく忍び音がちにて、はかなく日ごろにもなりゆく。

さすがに髪が短いのが見苦しいと思って吉野の宮が持たせてくれた薬に夜毎に9CMのびる薬があったので、それを中納言が自ら洗ってお世話するうちに日が過ぎていく。

京では右大将が失踪したと大騒ぎ、父の左大臣はそういえば去年の冬ぐらいから様子がおかしかったと嘆いている。
左大臣も困惑しかり、京中で読経や祈祷が行われている。

そのうち左大臣がうちの娘を愛してはいなかったのだと憤慨していると、風の噂で権中納言が左大臣家の四の君に密かに通っていたのを聞いて世をはかなんで姿を隠したのだ、四の君の姫君を権中納言の子供だといううわさが流れた。

そのことを右大臣が聞き、左大臣にも話をするとその噂が本当かもしれないとという事態の中、四の君以外に仕えている人で、四の君への父親の寵愛が並々ならぬのを恨みに思っている人が「権中納言との蜜ぎ事で右大将は失踪した。姫君を権中納言の子供で顔が似ているので不審に思っていた所、七日目産養の夜の四の君へ寝所で偶然見してしまったのです。」と書いた手紙を母上に見れるような場所に置いていった。母上はさっそく手紙を父に見せ、右大臣が姫君をまじまじと見ると確かに権中納言にそっくり。
「やはり」と納得してしまい、怒って四の君を勘当してしまった。
乳母子の左衛門は「同情しないわけにはいかない」とことのしだいを権中納言に手紙で知らせてつかいに持たせた。
さて女姿に替わった女君はこれより完全頭の思考も女へ変貌するただし一点を除いては


ひとへにうち頼みて身に添ひたるほどの、今は我身かくてあるべきぞかしと思ひ知り、なよくともてなしたるは、ありし人ともおぼえずらうたげにたをやかなるを、すべて限りなく思ふさまなる

今は一人権中納言をたのみに暮らしているうちに「私はこのようにしているのがいいのだ」親愛に満ちた様子はあの右大将とは思えない。

権中納言は
より寝ても覚めてもかやうならん人を見ばやと願ひしに、仏・神のわが思ひかなへ給なりけりと思ひよろこび、いかでくやしと思はせじ、ありし世を思ひ出でさせじとよろづにもてなすに、いかに慰みゆく

弱弱しくはかなげな様子がこういう人を妻にと思っていたのを仏や神様がわが願いをかなえてくれたと喜んで、こんな人といるなんてと昔を思い出させないようにと自ら大変お世話している。
そんな中納言もそういう生活が当たりまえになってくると昔の事で冗談を言いだす。女君は聞き苦しいと嫌がっていた頃。左衛門からの手紙が宇治にくる。
中納言は四の君の勘当をしり、むやみに女君に見せないわけにいかないので、事のありましを話して京へ出かけて行った。
女君は

たゞ人一人のあまりくまなき御をこたりと思ふぞ、疎ましきまでおぼゆれ

全てはこの人の好色に原因があるのだといとわしく思う。
中納言の去った後女君の和歌

 思ひきや身を宇治川にすむ月のあるかなきかのかげを見んとは

京に戻った中納言は四の君の下へ向かう。
もう右大臣家を勘当されているのでおそらくは乳母の家かと推察する。
さすがに気を許している双方で相手は妊娠しているから、四の君への愛情もひとしおで、遭えばこの人もと愛情が深まる。
さすが好色しばらく京でひっそりと四の君のお世話をした後宇治に戻る。

いと人少なにて、これもいとふくらかにところせう苦しげにて、よろづを思ひ続け、かきくらし思ひ乱れてながめ臥し給へるさまは、いかでこの日ごろ隔て過ごしつるぞと、あさましきまでおぼしつらん

宇治に帰れば帰ったで人の少ない場所でこれも大きなお腹をした女君が不自由そうに苦しそうで呆然と物思いにふけっている様子はなんで離れてくらしていたのかと後悔している。

ありし有様にてはこよなしかし、まして、かくのみ心を分けられては何にかはせん、などぞ思へど、いかにもく、このほどまではこの人を背き隔つべきにあらずと、さはいへど、男にならひにし御心はうち思ひとりて、

この様子が呆然としているわけでなく。「この男の心を四の君と二分しているようではどうしようもない。いやいや子を産むまではこの男の機嫌をそこねてはいけない」と

すごい超冷静!!!

やすらかなるけしきをと、いと思さまにめでたくうれしと思ふ事限りなし

かたや中納言、おとなしくしている様子が「このうえなく理想的で喜ばしい」と有頂天

超馬鹿男~~~~そのうち痛い目あうよん!!!


さて京の父左大臣は
今は恋ひ泣き給しことばさえ絶えて、ほれく ゛ と臥し沈み給にたるを、殿の内又これを嘆きあつかひたてまつる。

もはや見つからぬ女君にすっかり意気消沈床についてしまった。
男君にその様子に里下がりして試案する。こうなっては私が探しにいくしかない。と決意して母に打ち明ける。母も最初は反対したが、男君の意思が固いとみると父にも内緒で尚侍が帳台にいるように偽装して、狩衣と指貫、烏帽子を用意させて男君は髪を切り、着替えて車で京を離れる。
まずは女君が籠っていた吉野の宮の邸宅を目指すことにする。
その道中の宇治で

几丁に透きたる人も、見入るれば、紅の織単衣に同じ生絹の単衣袴なるべし。いと悩ましげにて
ながめ出でて臥したる色あひ、はなく ゛と光るやうににほひて、額髪のこぼれかゝりたるなど絵にかきたるやうにて、いといみじく愛敬づきうつくしきかたちの見まほしきが、霊くじうものよりけにねたげなるまみ、見しやうなる人かなと見るに、大将におぼえたりけり。心惑ひして見れば、いといたううちながめて物思ひたるけしき似る物なく見えて、顔やうはなやぎたゞそれとおぼゆるに、我身を思へば女ざまに似給へると思ふに、ふとたち寄りて、「いかにしてかくておほするぞ」と問はまほしけれど、さして知りがたく、うきたる
事により人にとがめられぬべければ、念じて見るに、人気やすらん、簾おろしつる、口惜しさぞ限りなき。

我をもあやしと見知りやし給らんとおぼゆるに、見えばやと思ひて小柴垣のもとまで歩み出でたるを、内にもあやしく人気のすると思ひて、簾をうちおろして見出だし給へるに、言ふかぎりなくけうらになまめきたる男のいみじくあてなるがさし出でたるに、いとあやしくおぼえなくとうちまぼらるれど、世に出で交らひことくしき人の見知らぬやうはなきに、さらに有しにはあらず、なをくくだれる際とは見えず、我ありし世の鏡の影にて、うち思ひ出づれば、内侍の督の君、限りとおぼしし夕べ、いみじく打泣きて、まほにはあらずうちそばみ給へりし御顔におぼえたるかなとふと思ひ出づれど、うつたへにその御有様変はりぬらんと思ひ寄らず、世にかゝる人の有けるよ

なんと兄妹宇治でニアミスしかも男君、女君としらずに恋心的な!ってか、好色・・・・・。東宮オンリーではないのね。あんなに人見知りだったのに男姿に性格までかわってる。
ここが式部卿の別宅だと聞きめんどうになったらと去ってしまう。


中納言は、忍ぶ方苦しさ静心なげにてまたおはしにしかば、こゝには月のかさなるまゝに、いとゞ起きも上がられずつれく ゛
とうちながめつゝ、かくてのみ有べきなめり、とる方なくあぢきなくも有べきかなと見るまゝに、人は、われに劣らず深き方に心を分けて、これに五六日又かれにさばかりと籠り居給絶え間を、さもならはずも待ちわたり思ひ過ぐさんこそ、あひなく心尽くしなるべけれ、さりとて、もとの有様に返りあらためなどせん事は有べき事ならず、ともかくもたいらかにもしあらば、吉野に参りて、尼になりてあらんとおぼすを慰めにし給へるを、中納言は知り給はず、今はをだしく、かくを見るべきものと打とけおぼしては、かぎりくと見ゆる有様のいみじく心苦しきに浅からず心を分けて、大方の世にはゞかりて歩きもし給はぬまゝに、中く心やすくこの二所に通ひ見給ふ。
年比、世とともに、心に物のかなはぬと嘆きわびつる思ひのかなふとおぼして、うちくは、心やすくもうれしくも、又心のいとまなく苦しくもおぼえて、静心なくたち帰り給へるに、これもいと苦しげにうち悩み給へるを、いかならんと、いづくにも心のみ尽くる心地して、打臥して語らひ給に

中納言は中納言で宇治に戻ればこの女君の苦しそうな様子にいとおしく、京では四の君を愛おしく2か所に限って通っている。
四の君と愛情を二分しているのに耐えかねている女君は子供を産んだら吉野に行って尼になると固く決意している。

先の男君の話が使用人から、中納言にチクられてしまう。女君は私が男姿でいたのでしょう。と適当にあいまいにして話を終わらせてしまう。中納言はまだ男姿でいたいのだと悲嘆にくれる。

さて尚侍は吉野の宮の邸宅につき宮に歓迎される。

いみじかりける人の御相かなとうちかたぶきて、これぞ我むすめに縁ある人にものし給めりと見給ふに、かつく ゛ いとうれしく頼もしくて、所につけたる御あるじなどおかしくしなし給

吉野の宮から大変立派な人相だと褒められ、我が家の娘と縁のある方だとおっしゃる。
そのうちお手紙をくださる事になっていますから、このままここでお待ちするように逗留を勧める。

さらにのりのりの吉野の宮
国母の位に極め給ふべき相おはせし人なり」と聞こえ給

女君がいずれ国母として極められる相があると予言しちゃいます。
国母とは天皇の母の事

そして男君は漢字や学問を一切されていなかったのでこの吉野の宮の元でよい師と巡り合い知識を吸収されて過ごしていきました。

宇治には、いと苦しげにて、月もたちぬれば、中納言かた時もたち離れず、いかにせんとおぼし惑ふに、人柄の、かたちをはじめ、いとにほひ多く愛行づき、中くいと見まほしきに、もてなし有様はれく ゛しくならひ給にしかば、いとあへかに埋もれいぶせくはなく、わらゝかにおかしく、いと馴れたる心つきて、物を思ひ嘆きてもひとへに思ひ沈みてはあらず、泣くべき折はうち泣き、おかしく言ひたはぶるゝ折はうち笑ひ、いはん方なくにくからず愛敬づき給へる人の、まことに物心ぼそく苦しきまゝに、いとたゆたげになよくと心苦
しげなるを見給ふ中納言の御心地、我身にかへてもこの人をいかでたひらかにとおぼし惑ふしるしにや、
七月ついたち、思ふほどよりはいたくもほど経で、光るやうなる男君生まれ給へるうれしさ、世の常ならんや。子持ちの君も、手づからかき臥せてあつかひ給さま、いとあはれなり。
若君をば目もはなたず、疎からぬ人の乳ある迎へ寄せて、乳母にも、世にあらはれてかゝる人のあらましかば、いかにかひく ゛しくもてなされまし、よろづ隠れ忍びたるこそかひなく口惜しければ、このほどは異事なくこのあつかひに心入れて、あからさまにも立ち出でず。日に添えて、

女君も出産の日がちかずくにつれて苦しそうにしているのを中納言ははらはらしつつも「この人を自分の身をかえてでも無事にお産させよう」と決意して、そのかいあってか7月1日に大変美しい若君が誕生した。
女君も若君をたいそう愛して自らお世話している。
ひそやかに生まれたためにしっかりとした乳母をつけられないのが残念だと中納言は思っているので、どこにもいかずに男君の世話をしている。


この若君のうつくしく光り出づるさまを、母君の御もとにさし寄せつゝ、
「あはれなりける契りを。昔よりかゝる御さまにて思ひなくあらましかば」と言ひ出給にぞ、
げにもあやしかりける身かなと思ひ出づるに、
かの所の七日の夜扇見つけたりし事など、いとにほひやかにの給出でて、かたみにおかしくもあはれにもおぼす。

若君を母の女君に見せながら、「昔から悩みのない。こういう生活をされていたら」というと「本当に変わった身の上だわ」と思われる。
過去にあった七日目の産養のしるしの扇の話も中納言に笑いながら言えている。

そんなこんなで過ごしていると男の変な安心感は増幅していく、このままもう京へ戻らずこうして生活してくれるに違いない。
若君がいるのだからと。
そう思われると親にお世話されていない四の君の出産が気がかり、それとなく女君に四の君の事を言ってみる。

しかしここに連れて同居しようかとにおわせる。
すると女君はかつての夫だと思われるのは恥ずかしいと適当にいいともいやともいわない。
中納言はまぁなんてねみたいに・・・・・はぐらかす。

すると中納言の浮いた様子が見透かされていてしっかり

かくのみこそは有べきなめれ、わが心一つにこそよろづの事につけて嘆き絶えせざりしか、大方の世につけてはかたはらなくなりにし身をあひなくもてしづめて、たぐひなくだにあらず、かくのみ待ち遠に思ひ過ぐさん事こそ、なを有べき事にもあらね、右の大臣、世人の言ひ騒ぐほど、なをしばし勘じ給にこそあらめ、世になうかなしくし給御むすめにて、ひたぶるに一方に思ひ許し給はば、あなづずよにこそあらめ、我いかなりとも、その人と知られあらはるべきやうなければ、かゝる宇治の橋守に、網代の氷魚のよるのみ数へんほどの心尽くしや、さりとて、もとのまゝに返りなるべきにもあらず、いかにして吉野山に思ひ入りて、後の世をだに思はんと思ひなるには、この若君の捨てがたく、憂き世のほだしつよき心地し給。

「所詮男心はこんなもん。私だけが嘆き悲しむのだ。かつてのような生活をしていた私が男を待つだけの生活などすることなんかできない。右大臣は今は人の目があるから感動しているが、恋しくなったら呼び戻すと中納言もあちらにいくだろう。この宇治の地で待つだけの生活だ。とはいっても男姿で戻れない、やはり吉野の宮の元で尼になろう。でも若君の事だけがさらに気になる」

一旦中納言は宇治に帰るが四の君の出産が気がかりで、しばらく宇治にいるだろうと思うと京から近況が伝えらてせわしがない。
女君はもうい幾日とはいない人だから嫉妬も見せずに、あちらへとうながす。
それとは気がつかない中納言はさすがに男姿の方だ。さっぱりしているな

馬鹿まるだし。

8月になると女君は若君の乳母に吉野の君に手紙を渡さないといけない事情があるが、中納言には知られたくないのでつかいをだしてほしいと頼む。
乳母は吉野の宮に姫君がいらっしゃるからその方だろうと思い込み依頼を受ける。
手紙を受けた吉野の宮は早速男君に知らせるとなんと使者から宇治の式部卿の別邸にいると知らされる。なるほどあの時の女ア君は妹だったのだと知る。使者に見事な女衣装を持たせてお手紙を返される。
その手紙を受け取った女君をあの時の男を兄だと知った。

そして中納言が四に君の出産で留守がちできずかない頃を見計らい兄妹が会いに来たと乳母に相談し密かに宇治の家で二人落ちあう。

月いと明かき影に、髪はつやくとひまなくかゝりて、限りなくうつくしげにて、いといみじく、女君、なつかしくうち泣きてゐ給へるも、いなや、こは誰そとおぼえ給。えもいはず清らになまめきたる男にておはするも、うつゝともかたみにおぼえ給はず。
行方も知らず聞きなしたてまつりて、思ひしさま、出でて来しことに、あやしく似奉りたる人の有かなと、恨めしきに忍びがたくて、もし御覧じ知るやうもやとすゞろにたち出たりし事など、こまかに語りて、
「さても、いかでかくてはおはしますぞ」と問ひ給に、答へきこゆべきやうもなく恥づかしけれど、艶にをしこめて有べきことならねば、

「年比は、世づかぬ身の有様を思ひ嘆きながら、さる方に、いかゞせん、ありつきぬべきよと思ひ侍しに、心より外に憂きことの出で来侍にしかば、さて有べきゆもなく、思ひわびて身を隠し侍にし」
さま、けしきばかりうちの給へる、さなんなりと心得はてて、
「今はさは、かくておはしますべきにこそあなるを、かくのみ人知れぬさまにてはいかゞ過させ給はん。殿にはいかゞ申侍べき」との給へば、
「その事に侍る。かくてのみなんさらに侍るまじうおぼゆるを、世づかぬ身なりしほどのみ、恥づかしさを、異人に見えあつかはるべきにはあらず、あさましと見え知られにし人にこそはと、ひたぶるに身をまかせて侍つれど、今はながらふべきやうにやと生きとゞまり侍に、かくてはらじとおぼえ侍れど、さりとて有しさまに身を又なし変へんは、有べきにもあらず。とてもかくても、身の世づかぬをき所なくおぼえ侍を、此吉野山にかたちを変へて跡を絶えなんと思侍」と、うち泣きての給。
「わが君、かゝる事なの給そ。殿・上のおはせん限りは、我も人も世をなん思ひ限るまじき。御事により、殿はむげに不覚になり給へりしを、見置き奉りてなん出侍にし。げに、何にかはかくて忍び隠ろへておはしますべき。又、ことざまにては、聞こえ出で給はんもあいなし。我なん、「たゞあるさまにもてなしてあれ」と言置き出で侍にしかば、誰にも見え知らるゝ事も侍るらざりし身にて、そのけぢめのありなし知る人も侍らざなり、さてこそやがておはしまさめ。さても、中納言ものし給らん、悪しかるべきことにもあらず。今始めたるやうにもてなし、中く人目やすくこそ侍らめ」との給を、答へはともかくもの給はず、
かくて、この人に行方知られであらばやと思ひ侍なり」と聞え給へば、
そは、いと悪しき事。人柄さておはしまさんに、げにいとやんごとなき事にはあらねど、口惜しかるべき際に侍らず。いかにも、さらばまづ忍びてわたらせ給て。殿の聞えさせ給やう侍なん」と聞え給へば、
「殿に、かくてこそありけれとは聞こしめさあれじ。ただ、世づかざりける身をもたわづらひたりけるさまを」と、
うち恥ぢらひ給へるも、年ごろいとすくよかなりし人の御もてなしとも見えず。つきすべくもあらぬに、夜明けぬべければ、やをら出給て、これより京ざまにおもむきておはするも、今は限りと思ひたちしほどのあはれに思ひ出られ給て、おはしますをも知らせ給はず。

さてようやく再会した二人しんみりとお互いをほめたたえる。

そして本題

女君それとなく今まで男の姿で過ごしていたけれど、見苦しいと考えられて密かに籠って女の姿になろうと京を出た。と言い出します。
「ではどうしましょう」と男君がきりだすと。女君すると吉野の宮の元で尼になると泣き出します。
男君ここで説得「それはいけません。両親がいるうちはこの世を見限ってはいけません。丁度里に私がいるようにしてくださいと言っているのでこのまま入れ替わりましょう。それから中納言と結婚したとすれば周りもおかしいとは思いません」と提案。
すると女君きょひる。

「あの人には行方を知られたくない。」といいだす。
すると男君
「あおいう好色ですがこようえなくというほどではありませんが、たいしたことないわけではありません。ただそうしたいなら父上の話もありますからまずはここを出ましょう。」

「父上にはこういう生活をしていたと知られたくないのです。」とぼそり。


男君はすっかりメンズしてる・・・・・・。これから尚侍で女装していた名残もまったくなくメンズ感大の男君です。
そういう話をしているうちに夜が明けそうなの男君はこっそり京へ戻った。

一方父の左大臣は女君が失踪してから病床にあって、そんな夜へんな夢を見る。

かくなおぼし嘆きそ。この御事どもは、いとたいらかに、明けんあしたにその案内聞き給てん。昔の世より、さるべきたがひめの有し報ひに、天狗の男は女となし、女をば男のやうになし、御心に絶えず嘆かせつるなり。その天狗も業つきて、仏道にこゝらの年を経て、多くの御祈りどものしるしに、みなことなをりて、男は男に女は女にみななり給て、思ひのごと栄へ給はんとするに、かくおぼし惑ふもいさゝかの物の報ひなり

聖が出てきて
案じる事はない。前世の行いの為に天狗が男を女に、女を男にしたけれど仏の祈りに成仏して今元に戻った。明日には吉報がくるだろう。という内容で、は???と思ったから男君の母の方の妻にこれこれというと驚いて男君が狩衣で女君を探しにいったと真実を伝えたところ。私が知らないとはと・・・・あきれている。

幼かりし時より交らひつき給にし大将こそびゞしかりしか、あへかに人にも見えず籠り給てし人と思に、かたくなしくおはすらんとおぼすに、御前に参り給へるに、起き上りて、御殿油かゝげて見奉り給に、たゞ大将の御にほひ有様二つにうつしたるやうにて、これは今少しそゝろかになまめけるけしきまさり給へり。かれは少しさゝやかに、小さき方により給へりしぞ飽かぬ心なりしかど、まだ年の若かりしに、これはいま少しものくしく、飽かぬ所なくぞ見え給。うちまぼり給て、夢のやうなる

男君が邸に帰り父と面会すると長く籠っていたから見劣りする男姿かと思いきや女君とうり二つで、さらに男っぷりが増してたいそう風雅で威厳がありまったく欠点がない。

その姿は失踪した女君でその人を思い出して涙する。

男君は女君が女の姿にいたこと、かくれたのは女に替わる為だったと話した。

父は疑問に思わず、うれし涙にくれる。
では二人入れ替わりなさいと言われると。男君は「まだお互いの世界を知らないので、いろいろ相談してからにします。」と話し合い、父は安心して御粥を召し上がる。

そうして男君を連絡をとりながらいついつに逃げると女君は宇治にいる。
そうはいっても若君が愛おしい、でも連れてゆけない。何故なら隠し子では世間に出せずにどうしようもない。
中納言も若君を愛しているから無体な事はしないだそう。
まだ中納言の子とわかるだけ世間へ出せるし、会える事に期待している。
しかし若君の事は愛おしい
若君を目離れず見給に、いみじくおかしげにて、やうく物語り、人の影まもりて笑みなどするを見るぞ、いみじうかなしかりける

そうこうしていると中納言も宇治に帰る。
もここにはいないと決めた女君は嫉妬もまったく見せない。

紅の単襲に、をみなめしの表着、萩の小袿、いたく面やせ給へりしが、このごろなをり給へるまゝに、いとゞはなばなとにほひを散らしたるさまして、御髪もつやくと影映るやうにかゝりて、丈に少しはづれたる〔末の、ふさくと物を引ひろげたる〕やうにかゝりたる裾つき、さがりば、八尺の髪よりもけにいみじくぞ見ゆる。額髪よりかけたるやうにかゝれる絶え間、かしらつき・やうだいなど、こゝぞとおぼゆるくまなく、うち見るにはいみじからんもの思ひもはるけ、憂へも忘れぬべく見ゆるに、心のゆく心地して、「子持ち栄へこそあまりにし給へれ。などて過にし方おはせし有様をめでたしと思ひけん。かくてはこよなくまさり給へりけるを。かゝるさまにてさし出交らはせ奉らんに、うち見ん人ごとに心惑はざらんや」と、限りなきけしきにかき撫でつゝ、わが身にもかへつばかりに思ひ惑はるゝ人の御心苦しさは、たゞ今は慰みて、異事なく語らひて臥し給へる

紅のを二枚重ねて、縦黄色・横糸萌黄色女郎花の表着に表紫裏白の萩の小ネ圭を着て華やかに満ちた髪を黒々とした美しい姿で迎え、辛きこと晴れ晴れとする悲しいことも忘れさせてくれるくらい素晴らしい。
「子供を産んでからさらに美しくなられましたね。以前の姿を美しいと思ってたとは。この姿を見たら殿上人も心惑われるでしょう」
女君を倒してはかき乱しながら抱いている。

そうこうすると京から四の君がいまに死にそうと使者がくる。
また変化があれば知らせに来るようにと中納言はその場にいる。
しかし出産も近いので、ここにも長くおれず。
女君にお伺いをたててみる。

「しばらくの間の事だから、無情な状態だから私が恨まれると困るからなんだよ。あなたは物の分別もあり嫉妬心もないので安心している。事がすんだら私を見て」あぁだこうだ言ってくださいとなんだなんだ行く理由をつけている。
女君には嫉妬もまったくないので、そんな事はない。「あちらが心配だからさぁ~~さあ早く。」と男を積極的に送り出す。
男はそれでも気がひけるから「あなたがさあ行ってくださいとおっしゃったら出ていく。」といので「さあ いってください」と女君が言って中納言は京へ行った。

馬鹿男~~~これが最後に知らないでまんまとひっかかった。まああ物語なんでね。

変はり給けしき見えじとさらぬ顔に忍ぶれど、出で給ぬれば、若君抱きて、つゆまどろまず泣き明かし給ふ。

変わったところをみせまいといつものように見送るが、家で若君を抱いては泣き明かす。


その翌朝四の君女の子を出産して、無事だという手紙がくる。女君はそぶりを見せずに返しの手紙を書いている。
まだ中納言が京にいると思うので、この頃がと

宮に消息聞え給とて、日ぐらしこの若君をつと抱きつゝ、忍びて打泣きなどし給ふ。

もう最後におもうので若君を抱きしめては一晩中泣いていた。
よく夕方男君に連絡して乳母にも再度縁者の男の訪問を手引きしてもらい。前回の様になにげなく若君を乳母にあずける。
そのまま車に乗り込み吉野へ向かう。

翌日には吉野へつき宮は元の所ではいけないので娘の部屋に一室もうけて女君を迎える。
父からもいろんな品が送られてくる。


心やましき思ひ絶えずいぶせかりし憂き世の中離れて、やすらかにおぼさるれど明け暮れ見馴れし限りなく山口しるかりし顔つきぞ恋しく

中納言との面倒な情交も切れてほっとしているが、明け方暮れ方に若君の有望な顔立ちを思い出し恋しいと嘆く。

男君は、たち離れながら、中納言の心の中苦しくおぼさるゝにやと心得たまひて、「あやしく世づかぬ有様も見奉り知り給にけん人を、あらためてかく離れさせ給はんも、あぢきなき御事に侍るべきを、いかにおぼしめし定めさせ給ぞ」との給を、「心より外に心得ぬ契りの有けるに、寝ざとくまではいかゞ侍らん。心憂しと思ひながら、何心なくいはけなき有様を身に添へて、あやしかりぬべき侍しかば。見捨てつる心苦しさばかりをなん思侍る」とて、忍びがたくうち泣き給ふけしき、いとあはれ也。「げに、さおぼさるべき事侍゛ な

その様子を中納言の心中を思い合っての事だろうと察し「これからどうしようとお思いですか」
と聞くと女君は「心外で納得の出来ない契りでした。その男と将来のことなど考えられないが捨てて来た息子の事を思っているのです」と涙する。

「なるほどそう思うのは当然です。その子が離れがたい御縁なのですね」
と父には息子の事はいえず、中納言とは縁を切りたいと思っているのだと推測した。
どうなるのだろうかと憐れに思われている。

男君のほうも東宮様がご懐妊?と思っていた頃に京を出てその様子も心配だしこの女君が尚侍で宮中にいて東宮様に仕えてくれたら、自然と近くにそういう機会もあろう。ならばといままでの事を詳しく女君に伝えた。

ふる里には、いとあはれにてたち帰りにくく侍れど、殿・上を思ひ聞えさする方はさる物にて、その御事によりてこそ、えさらず思ひ立つべく侍なれ」などうち語らひつゝ

やはりここで出家するわけにいかないなと二人入れ替わる相談をする。

お互いのいままでの経験を話し合い、女君は笛、筝、琴、琵琶などの楽器、漢詩や文字も真似しあう。
元々似ているのだから尚にせようとするからにないわけがない。それぞれ元の通りに勉強しあっているうちに

つれく ゛ なるまゝに、さし向かひて、おほやけわたくしかゝる御物語の中に、麗景殿の細殿におりく行きあひし人のことなどをさへ語り出て、「右の大殿の君のはじめよりの有様、大臣の明暮恨みられしを、内くの乱れは知らず、世にある程にては訪れぬ恨みいみじう侍なんものぞ。げにすべてつゆ飽かぬことなく、いみじうすぐれてみでたきを、権中納言のこと思ふに、心より外の事にぞ侍かし。今はうけばり、我ものといみじう思ひとゞめてあつかひ給しを、昔ながらもの給ひ寄らん事」など、みな語り聞え給。

話はだいぶはしおっているので実は女君が出仕してる時に麗景殿女後の妹という女と夜を話し明かしたり、和歌を送りあったりした話やなんと!四の君の右大臣の実家によらなかったらひどく恨まれたので四の君も大変素晴らしい女性で中納言との浮気も元は自分からではなかったと思うので男君が京へ戻ったら四に君の所に通ってくださいと申し出る。
ようは四の君と寝てくださいと言っている。・・・・・・・???

麗景殿女御の妹はまだわかるけど、
なんっせ後見人がいないと宮中でも肩身が狭いましてや後見をもたない麗景殿女御の妹では右大将は考えられる将来有望だもの。
ではなぜ???自分を裏切りプライドを傷つけた相手四の君に????。

これはどれか?
中納言への復讐 二人とも失う
四の君への慕情 心は男だからやはり中納言に対しての嫉妬・男君=私
右大臣家の後見 二人とも左大臣の子息だけど後見人は多いほどいい。右大臣の後見は味方になる。

全部かな???しかし平安時代の人も常識は???だけどね。

東宮一人まっしぐらかと思った男君
ここで前回に躊躇して姫君に手を出さなかったが、ここにきて美しい姉姫君にラブ~~~~流れのままにベットイン。
ようは父親公認の夜這いですが。
成就でき二人は恋人同士に。


さて一方の中納言、宇治に帰ると女君が若君を残して失踪。乳母や使用人を事情を聞くもさすがの乳母もいいだせない。
知らないと中納言途方にくれる。若君を抱いて泣き明かす。自分への歌もあるかもとそこらじゅうをひっかきまわすが、そんなものはない。四六時中若君を抱いて女君の無情さに泣いている。あれこれ詮索するもまったく足取りをつかめない。最後は若君がたよりとばかり悲しすぎて和歌も詠めない。


っていうかお前が悪い!!!この人更に馬鹿みたいになっていきます・・・・・・・。

さて四の君ですが、今回の産後の肥立ちが悪くていまにも死にそう。最後は父上の御顔を見ずに死ねないとさすがの母親も右大臣に直訴して。
元四の君をこようえなく愛していた父だからさすがに後ろめたくなり四の君の元へ。あえば愛情こようえなく。邸へ移してお世話する。四の君の中納言がこないのも父の所にいるからどと思い込んでいるのも丁度いい。
この姫君の愛しいと乳母をたくさんつける右大将がこないのが残念だと思ってる。

さて吉野では両親がいまかいまかと帰京を待っているので、もうそろそろというころ。
男君は姫君を京へお連れしたい。でも姫君はこのひなびた父のいる場所を離れるのもさみしい、京は気後れすると・・・・・。
とりあえず今回は吉野に残してお迎えの準備が出来たら、おつれしようと思っている。

さて二人京へ次は最終章です。
どうなるか?ってかだいたい検討はつくでしょうが。でも中納言の展開が面白いですよNNN





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